結婚や出産年齢の高齢化がある、との指摘も

 確かに、今の日本はKY(空気が読めない)とか、コミュ障(コミュニケーション障害)といった言葉が使われるように、人に対する振る舞いや人と人との関係性に、非常に気を使わざるを得ない社会という気がします。

 「コミュニケーション能力を求める大人社会の価値観は、そのまま子どもの社会にも反映されます。そういう意味では、今の日本は、昔に比べて発達障害のある子どもが『目立ってしまう』社会であり、『生きにくい』社会だともいえますね」(黒田さん)

 実は、発達障害が目立ってきたのは日本だけでなく、先進国を中心に世界的な現象といえます。発達障害が実際に増えているという説もあれば、発達障害の概念(診断基準)の変化によるという説もあり、日本やアメリカでは大規模な調査も行われています。

 まだはっきりとした因果関係は分かっていませんが、環境汚染や食品添加物、結婚・出産年齢の高齢化などの影響もあるのではないか、との指摘もあります。

 いずれにしても、今の時代、発達障害の話題は決して特別なことではなくなりつつあります。「わが子が発達障害かもしれない」ということもあり得ますし、また友人や親類など親しい人が、この問題に直面することがあるかもしれません。

 発達障害によって悩みを抱えがちな子どもに対し、親として、また身近な大人として、何ができるのかを、次回から考えてみたいと思います。

(取材・文/小林洋子 イメージ写真/鈴木愛子)