社会の変化で、発達障害が目立つように

 これほど発達障害の子どもが増えているのは、一体なぜなのでしょうか。その問いを、発達障害の専門家で名古屋学芸大学ヒューマンケア学部・教授の黒田美保さんにぶつけてみると、こんな答えが返ってきました。


黒田美保(くろだ・みほ) 名古屋学芸大学ヒューマンケア学部教授。東京大学大学院教育学研究科および福島大学子どものメンタルヘルス支援事業推進室客員教授。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(医学博士・学術博士)。臨床心理士・臨床発達心理士。2005~06年ノースカロライナ大学医学部TEACCH部門に留学。帰国後、国立精神・神経医療研究センター研究員、福島大などを経て2016年4月より現職。2男2女の母。『自閉症:ありのままに生きる ~未知なる心に寄り添い未知ではない心に~』(金剛出版)など著書・翻訳多数

 「一つには、発達障害という概念が広がり、また、それが知られるようになり、教育の世界をはじめ、大人の目がそこに向けられるようになったことです」

 過去の時代にも、発達障害の特性をもつ子どもは、集団のなかに一定の割合でいたのです。いつもそわそわして落ち着かない子、集団になじめない子、不器用でいつもみんなから遅れてしまう子。皆さんも幼児期や小学校時代を思い返せば、「ああ、そういう子は確かにいたな」と思い当たるのではないでしょうか。しかし、以前は「少し変わった子」としか見られておらず、良くも悪くも、特別視されることは少なかったわけです。

 それが発達障害という概念が出てきたことで、社会的に認知され、支援が必要だと考えられるようになったということです。

 さらに、黒田さんは、社会で求められる力が変わってきたことも理由の一つに挙げています。

 「以前は、第1次産業、第2次産業で働く人も少なくありませんでした。農業や林業など、自然を相手に自分のペースで仕事をする、工場で職人として一人でコツコツと仕事を進める。そういう“人と密に接することが少ない”職業もたくさんありました。少し変わった個性を持つ人でも、その人の特性に合った形で生活や仕事ができたのです。しかし現代は、大多数の人が第3次産業のサービス産業に従事しています。サービス産業というのは『人が相手』の仕事ですから、高いコミュニケーション能力が求められます。そのような社会では、対人関係が苦手であることが多い発達障害の人は、うまく適応できないシーンが多くなり、どうしても問題視されることが多くなってしまいます」


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