6年間、安価で高い教育が受けられる

 佐藤さんも中村さんも、これだけ注目度の高い公立中高一貫校の人気の理由としてまず挙げるのが、学費です。

 「費用面で見ると、私学はやはり高い。年間、最低でも50万円前後はかかりますし、入学時には入学金などでもっとかかるわけです。一方、公立中高一貫校は公立なので中学3年間は無償、高校3年間も安価です。この差はかなり大きく、保護者からすれば、まったくマネープランがガラリと変わってしまうほどの大きなインパクトがあります」(佐藤さん)

 さらに、佐藤さんは、こう続けます。

 「ベネッセ教育総合研究所の『首都圏保護者の中学受験に関する意識調査』(2012年9月実施)によれば、小学3~6年生で中学受験(受検)をする予定の保護者の世帯年収は、私立を第1志望とする家庭で1000万円を超える割合が40.3%であったのに対し、公立中高一貫校を第1志望とする家庭は17.6%。600万円未満の家庭は私立が29.6%だったのに対し、公立中高一貫校は59%でした。公立中高一貫校は、私立よりも多様な家庭が受検を検討しているといえるでしょう」

 では、地方も含めたデータではどうでしょうか。東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所の共同研究「子どもの生活と学び」研究プロジェクト(2015年)によると、中学受験を考える小学4~6年の保護者の世帯年収は下図のようになっています。

■中学受験を考える小学4~6年の保護者の世帯年収

出典:東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所共同研究「子どもの生活と学び」研究プロジェクト、「子どもの生活と学びに関する親子調査2015」(2015年7~8月実施)の資料を基にDUAL編集部で作成、注:子どもに受験をさせる予定の小学4~6生の保護者のうち、受験を考えている学校を「私立中学校」「公立中高一貫校」と回答した人の数値。「答えたくない」、無回答、不明は除いて算出
出典:東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所共同研究「子どもの生活と学び」研究プロジェクト、「子どもの生活と学びに関する親子調査2015」(2015年7~8月実施)の資料を基にDUAL編集部で作成、注:子どもに受験をさせる予定の小学4~6生の保護者のうち、受験を考えている学校を「私立中学校」「公立中高一貫校」と回答した人の数値。「答えたくない」、無回答、不明は除いて算出

 上記の2つの調査は、実施年も子どもの学年も異なるので参考程度ということにはなりますが、だいたい、同じ傾向であることが分かります。

「ena」の小学部長・中村絢香さん
「ena」の小学部長・中村絢香さん

 enaの中村さんは、こう言います。

 「公立の中高一貫校で6年間じっくりと、さらに少なくとも中学3年間は無償で、6年間を通しても非常に安価で育成してもらえるのは、親としてはありがたいといったことで、当初から大きく注目されていました。ところが、最近では6年制での教育のカリキュラムの中身にも関心が向けられていると思います」

 公立中高一貫校を卒業した生徒の合格実績も、さらに人気に拍車をかけることになったようです。

 「大学の合格実績を見ると、小石川や武蔵といった都立トップ校といわれる学校は素晴らしい実績を出しています。安価で6年間見てもらえるうえ、東大をはじめとする難関国公立大に入れる可能性もある。これは、私立よりもおトクなんじゃないかということで、人気につながっているんです」(中村さん)