「中等教育学校」と「併設型」の違いは?

 一口に公立中高一貫校といっても、「中等教育学校」と「併設型」、「連携型」の3つのタイプに分類されます。

 「中等教育学校」は、中学と高校を分けない形の6年制一貫教育の学校で、中学校に当たる前期課程3年と、高校に当たる後期課程3年とがあり、中学校から入学した生徒のみが6年間過ごした後に卒業を迎える形となっています。

 「前期と後期が一つの学校として成り立っている学校が、中等教育学校です。このような学校では、中学、高校という隔てがないので、高校生になる時点で生徒の募集は行われず、前期課程から後期課程まではそのままエスカレーター式で上がっていく。6年一貫の色合いが最も濃いタイプの学校で、1~6年生という呼び方をしています」(佐藤さん)

 公立初の中等教育学校は、1999年に開校した「宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校」です。1学年40人と小規模の学校で、全寮制。開校当時から山村の自然を生かしたユニークな教育が話題となっています。

 中等教育学校は2003年度は全国でわずか5校でしたが、3年後の2006年度には3倍の15校にまで増加。2015年度は、31校となっています。

 ちなみに、東京にある公立中高一貫校11校のうち、中等教育学校は「都立小石川中等教育学校」「都立桜修館中等教育学校」「都立立川国際中等教育学校」「都立南多摩中等教育学校」「都立三鷹中等教育学校」と、「千代田区立九段中等教育学校」の計6校となっています。

 一方で、「併設型」は、中学校と高校の区別があるものの、中学校から高校に入学するのに受験をしなくてよいという制度の学校です。また、高校から入学してくる生徒もいます。

 「基本的には中等教育学校と変わりませんが、大きく違う点は中学校と高校が別の学校として存在しているということ。名称も例えば『県立〇〇中学校・高校』となっていたり、『〇〇高校・附属中学校』となっています。こうした公立中高一貫校はすべて、併設型になります。中学校から高校へ上がる際には、中等教育学校と同様、試験はありませんが、高校から試験を受けて入ってくる生徒もいるのが大きな違いです」(佐藤さん)

 2004年に京都府内で同時に開校した「府立洛北高等学校・附属中学校」と「市立西京高等学校・附属中学校」が、新しい公立中高一貫校のモデル校として話題を集めました。2004年当時は、併設型の公立中高一貫校は35校でしたが、2015年度には倍以上の83校にまで増えています。

 東京にある併設型校は現在、「都立武蔵高等学校・附属中学校」「都立両国高等学校・附属中学校」の他、「都立大泉高等学校・附属中学校」「都立白鷗高等学校・附属中学校」「都立富士高等学校・附属中学校」の計5校。

 最後にもう一つ、「連携型」の一貫校もありますが、3年制の中学校と高校がゆるやかに連携したもので、中学校入学時は、特に選抜する試験はありません。2015年度現在、全国に80校ありますが、この連携型タイプの学校は都内にはなく、中等教育学校や併設型とは中高一貫という意味では大きくタイプが異なるため、今回の特集では取り上げません。

 下図は中等教育学校と併設型の学校数の推移データです。合計数を見ると2001年度(平成13年度)にわずか4校だったところ、2002年度(平成14年度)には3倍の12校、さらに翌年の2003年度(平成15年度)には28校、2004年(平成16年度)に48校と増加し、2015年度(平成27年度)には114校となっています。

 文部科学省は、公立中高一貫校の約500校設置を目標に掲げています。現在、連携型を含めても194校にとどまっています。私立の396校に大きく水をあけられてはいるものの、今後も設置数はさらに増えると考えてよさそうです。

■中等教育学校&併設型の学校数の推移

出典:文部科学省「学校基本調査」の資料を基にDUAL編集部で作成
出典:文部科学省「学校基本調査」の資料を基にDUAL編集部で作成