平均年収は212.4万円

 保育者不足の原因の一つには、待遇の悪さ、主に給与の低さがあるといえます。

 東京都が2008年4月から2013年3月までの、東京都保育士登録者全員、3万1550名を対象に行った「東京都保育士実態調査報告書」(有効回答件数1万5369件)でも、その事実が明らかにされていました。同報告書によれば、平均年収は212.4万円で、雇用形態別にみると正規の平均年収は269.2万円、非正規では104.1万円だというのです。

 また、同報告書で現在保育士の就業継続意向を尋ねた設問に対し、2割近くが退職意向を持っており、退職意向理由の6割以上を占めるのが「給与が安い」ことでした。

出典:東京都福祉保健局「東京都保育士実態調査報告書」(概要版)
出典:東京都福祉保健局「東京都保育士実態調査報告書」(概要版)

○退職意向理由のTOP3は、「給料が安い」「仕事量が多い」「労働時間が長い」。主に勤務条件に関わる項目が高い割合を示している

○「職場の人間関係」や「職業適性に対する不安」「保護者対応等の心労」なども一定数挙げられており、職場環境や保育士として自信のなさなども要因として考えられる

出典:東京都福祉保健局「東京都保育士実態調査報告書」(概要版)
○退職意向理由のTOP3は、「給料が安い」「仕事量が多い」「労働時間が長い」。主に勤務条件に関わる項目が高い割合を示している ○「職場の人間関係」や「職業適性に対する不安」「保護者対応等の心労」なども一定数挙げられており、職場環境や保育士として自信のなさなども要因として考えられる 出典:東京都福祉保健局「東京都保育士実態調査報告書」(概要版)

 また、全国小規模保育協議会によると、厚生労働省「平成25年度賃金構造基本統計調査」で私立(民間運営)認可・認可外保育所の保育士の平均月収は20.7万円。これは全産業平均の29.5万円を大きく下回るといいます。

 では、どう解決すればいいのでしょうか。

 全国小規模保育協議会では、「公定価格、すなわち補助単価を上げることが求められる」としています。

 「自民・公明両党の緊急提言では保育士の給与を4%引き上げるという案が出ていますが、これでは月額8000円程度の増額にしかならず、根本的な保育士の処遇改善には至りません。全国小規模保育協議会及びフローレンスでは、『特別処遇改善加算』等によって、保育士給与を月平均10万円程引き上げることを強く要望している」といいます。

 もちろん、厚生労働省でも「潜在保育士ガイドブック」などで、これまでにも保育士の離職理由や就職支援について、動いてこなかったわけではありません。とはいえ決定打は出されておらず、今回、全国小規模保育協議会が示す要望が採用されれば、大きく前進するのではないかと考えられます。