A. より若い時期に治療を受けることが大切です。

 生殖に関する知識が少ない日本においては、多くの人々が、「少なくとも体外受精(採卵手術により排卵前に体内から取り出した卵子と、精子の受精を体外で行う)などの治療をすれば、40歳を超えても妊娠できる!」と思っているようです。体外受精児は確かに増えていて、日本で生まれた子どもの37人に1人(3万2426人)が体外受精児です(2011年)。

 体外受精児が増えているといっても、何歳になっても治療が効果を表すかというと、それは違います。体外受精などの不妊治療(ART)後の、妊娠率、生産率、流産率を、より詳しく女性の年齢別に見たものが下のグラフです。

年齢別のART治療後の妊娠率、生産率、流産率(日本産科婦人科学会)

 黄緑のライン「子どもが出生した率(生産率)」に注目してください。32歳前後まで、治療周期当たりの生産率は20%前後で推移しますが、32歳を過ぎると徐々に低下し始め、37歳からは低下率も急増します。40歳で8.06%、41歳で5.62%、42歳で3.74%。43歳で2.31%です。

 生産率と逆相関するように、紫で示された流産率は、逆に、35歳ごろまでは、上昇がごくわずかにとどまっていますが、36歳ごろから急激に上昇します。

 このように、40歳を超えると、たとえ体外受精などの治療を受けても、赤ちゃんを産むのはかなり難しいことが分かります。 2014年4月1日から、特定不妊治療費助成に対し、年齢によって助成を受けられる回数制限に差がつきました。さらに2016年以降は、43歳以上で開始した体外受精治療は助成の対象外となることになりましたが、これらは、妊娠・出産に伴うリスクが相対的に少ない年齢、治療により出産に至る確率がより高い年齢に、必要な治療を受けられるようにすることが重要、という考え方に基づいて決定されました(*1)。

 これらのデータから、年齢が上昇するにつれて、妊孕力(【にんようりょく】。妊娠する力、妊娠しやすさ)が低下し、流産率や先天異常の発症率が上昇することと、最先端の技術を誇る日本の生殖補助医療をもってしても、女性の年齢による影響に打ち勝つことができないことが、ご理解いただけたかと思います。可能ならば、より若い時期に治療を受けることが大切なのです。

*1. 「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」報告書について 厚生労働省 平成25年8月23日