夫婦ゲンカと仲直りのプロセスを見せるのも教育

原田 そもそも学校というのは、クラスに40人近くもの子が一緒に過ごしているわけなので、ぶつかり合うこともありますよね。大事なのは、親や教師がトラブルを解決するんじゃなくて、「どうやったら子どもが自分の力で解決できるのか?」手助けすることなんです

 例えば、「△△ちゃんにバカって言われた」と自分の子が泣いていたとします。そしたら、「バカって言われて悔しいよね……。あなたはどうしたいの?」と子どもの気持ちに寄り添いつつも、どうしたいのかを子どもと一緒に考えていくんですね。「じゃあ、まずはお友達にその気持ちを伝えよう」という次のアクションになったときに、子どもがどうしてもできないと言ったら、そこで初めて親が出ていったらいいと思うんですね。

hitomi 最初から親や先生がトラブルの肩代わりをしたら、自分達で問題を解決する力が身に付かなくなりますもんね。あくまで大人は解決のサポートをするだけ、ですね。

原田 そうなんです。私が教員をしていたクラスではピンチはチャンスと捉えていました。というのは、子ども達が自ら問題解決能力を高められるチャンスになりますから! ケンカして思い切りぶつかったっていい。ちゃんと話し合って仲直りするというプロセスを踏んでいけば、人とぶつかること、向き合うことが怖くなくなります。そういう意味では夫婦ゲンカを見て、子どもも学ぶこともあると思うんですよ

hitomi 確かに! でも、仲直りのプロセスもちゃんと見せないといけないでしょうけどね。

原田 はい、おっしゃる通り。パパとママが口論しているのは子どもは分かりますから、そのときに「私はこう思うんだけど、パパはそう思うんだね。じゃあいい方法を探していこう」というプロセスを見せてあげれば、子どもは仲直りやより良い方向に向かうための話し合いの仕方を学ぶことができるんです。

hitomi なるほど~。そこまで見せられたらいい教材になりますね! うちは夫婦であまりケンカとかにはならないですけど、子育てについてはよく議論しています。特に上の娘に対しては、実のパパではないというところで、父親としてどう関わっていくのがいいのか、どこでどう叱るのか、逆に見守るのか、というような話し合いはしょっちゅうしていますね。夫も色々考えてくれていますが、お互い共通しているのは娘に気を使いたくない、ということ。実際、娘はパパのことを「パパ」って呼びますし、パパと一緒にお出かけしたりして日々楽しく暮らしています。ただ、思春期になったときに「この家族のことをどう思ってくれるのか?」というのはちょっぴり気がかりです。今は親と子で向き合おうと精いっぱいやっていますが、それが娘に伝わっていたらいいな、と。

原田 そうでしたか。ママとパパの娘さんを思う気持ちや、親として精いっぱい向き合おうとしている姿は、娘さんの心に届いていると思いますよ。心理学を学んだときの師匠から、「夫婦は何度でも結婚し直しなさい!」と言われたことがありました。結婚記念日には毎年2人でデートをして、夫婦の点検をし合ったりして。「最近の私達ってどうかな? 忙しくてゆっくり話ができていないよね」となったら、そういう時間をつくるように努力する。夫婦の点検と同じように、親子関係も時々立ち止まって点検して、微調整していけばいいのかなって思うんです。だから、先々のことは心配ないですよ。

hitomi そうですね。夫婦も親子も時々点検して、その都度微調整していけばいいんですもんね。でも、夫婦でいざ点検し合おうと言っても、夫がなかなか話を聞いてくれなかったり、話し合うのを避けたがる人もいたりするとよく聞きます。そうした場合はどうしたらいいんでしょうか?