どんな子どもでも、言葉がけ次第で変わる!

原田 教員時代に、荒れたクラスを引き継いだことがありました。やんちゃな男の子が5人もいたんですね。前年度にそのクラスを担当した先生から「この子のこういうところがダメだから、気を付けて見てくださいね」といった申し送りがあったんですけど、私はその報告をわざと聞かなかったんです。というのは先入観を持たないほうが、まっすぐその子を見られるから

 子どもの困った行動のほぼ100%は親や教師の注目を得るためなので、どうしたかというと、その子が問題行動をしていないときにこそ注目して、言葉をかけたんです。つまり、その子が適切な行動をしたときに、褒めたり、励ましたりしたんですね

hitomi ダメなところじゃなく、ちゃんとしているときに注目してあげたってことですね。

原田 そうです。彼らも24時間騒いでいるわけじゃないので、たまたま静かに座っていたときとか、真面目に勉強していたときを見逃さずに「今、とってもいい姿勢だね!」「真剣に考えていて、かっこいいね!」と言葉をかけていきました。人は注目された行動の頻度を増やすので、普段から適切な行動に注目し、勇気づけていると、わざわざ困った行動をして親や先生の注目を引く必要がなくなってくるんですね

hitomi それは、しっかりとその子のことを見てないとできないことですね。一瞬の輝きを見逃さない姿勢が。

原田 おっしゃる通りです。でも、そうした働きかけを続けた結果、彼らは少しずつ変化していきました。できないところを見つけて「ダメ出し」をし続けていると、子どもはダメなところをどんどん増やしていってしまいます。でも、私達はそんなことは望んでいませんよね。子ども達にはよくなっていってほしいのですから、「だったら『ヨイ出し』をしましょうよ」と言っています。

hitomi 「ヨイ出し」ですか! たとえできないところが多くても、必ずよいところってありますもんね。そこを見つけるんですね。

原田 私が専門としているアドラー心理学では、何かができたときに子どもを褒め、できないときに子どもを叱る賞罰教育ではなく、当たり前のような行動に注目し、勇気づけます。100点が取れたから、留守番ができたからいい子、素晴らしい、立派、すごい、ではなく、毎日学校へ行くこと、ごはんを食べること、健康でいること、勉強することなど、当たり前のことこそ注目し、認めるのです。

hitomi 親としても心がけていきたいところですね。この間、娘がお友達にしつこくしていたので、「隣の家の△△ちゃんはあなたのようにガサツじゃなくて繊細なんだよ。だからしつこくしちゃダメだよ」などと、ちょっと他の子と比べるようなことを言ってしまうんですけど、こういうのもよくないですよね?