『ちびくろ・さんぼ』が保育のコツを教えてくれた
たくさんの絵本を読みましたが、子どもたちが特に喜んだのは、『ちびくろ・さんぼ』でした。1カ月「ちびくろ・さんぼ熱」に浮かされっぱなし。朝、園に来て真っ先に言うのは、「今日は何回読んでくれるの?」。
「1回」と言うと、私にくっついて、2回、3回と言うまで離れない。帰るときは「さよなら」よりも、「明日も読んでね」という始末でした。
そのうちに子どもたちは、「ちびくろ・さんぼごっこ」を始めました。誰でも参加できて、ちびくろ・さんぼになる子もいれば、トラになる子もいる。普段おとなしい子も、このときばかりはお呼びがかかって大変。トラがぐるぐる回るときに中央に立つヤシの木なのです。みんな絵本を隅々まで知り尽くしているので、誰でも入れる遊びでした。
いつもトラばかりやっている子をヤシの木の役にして、ヤシの木の子はトラやちびくろ・さんぼに役を入れ替えると、それまで見えなかった面が現れます。私はこの本から、保育のコツ、劇遊びの効用などたくさん学びました。
『ちびくろ・さんぼ』のラストには、トラのバターで作ったホットケーキ169枚を食べるシーンがあります。当時はホットケーキを知らない子も少なくありませんでした。
そこである日、天谷先生がおうちから材料一式を運んで、子どもたちの前で焼いてくださった。みんなは大喜び。