「男性が育児・家事をするきっかけ」という位置付け

―― この制度をつくった背景と経緯を教えてください。

清水 弊社の人材マネジメントポリシーは「価値の源泉は人」です。これまで、全従業員が活躍する企業になるべく、2014年度にダイバーシティー推進プロジェクトを発足し、「多様な人材の活躍支援」と「多様な働き方の実現」という2つの軸で活動してきました。

 女性の活躍支援については、弊社でも増えているワーキングマザーの活躍支援を優先して実施してきたのですが、そもそも育児・家事と仕事の両立って女性だけの問題ではありませんよね。

 一方でこんなデータもあります。ご存じの方も多いと思うのですが、総務省が2011年に行った「社会生活基本調査」によると、共働き世帯における1週間で家事関連に費やす時間は、男性が39分、女性が4時間53分。ものすごく大きな差ですよね。

 特に、産後の大変な時期に男性が育児・家事を行えば夫婦間の理解が進み、一時的な負担軽減のみならず、将来にわたって家庭内での育児・家事の分担が進むと思うのです。そして結果的にはそれが働く女性の活躍推進や専業主婦の方の社会復帰促進やダイバーシティーの実現につながる。そう考えて、その支援策として、今回の制度改訂を決断しました。つまり、男性が育児・家事をするきっかけ、という位置付けです。

社長自身、次女誕生のタイミングで1カ月休んだ経験あり

―― 本制度策定の背景には、社長自身のご経験もあったそうですね。

清水 実は私には大学2年、中学1年の娘がおります。年がかなり離れている姉妹で、次女が生まれるタイミングが、長女が小学1年生になってすぐだったのです。

 弊社には当時から「ステップ休暇制度」という制度がありました。これは勤続3年以上の社員が、3年ごとに最大連続28日間(休日を含む)、心身のリフレッシュや新たな充電を目的とした任意休暇を取得することができる、という制度です。有給休暇で、かつ、30万円が給付されます。次女が生まれるタイミングとこのステップ休暇取得可能時期が重なったこともあり、長女の世話を担当するために、28日間の休暇を取得することにしました。

 当時私は弊社の求人ビジネス統括マネジャー。十数人の部下もいました。とはいえ、「休もうか、休むまいか」と葛藤した記憶は全くなくて。無鉄砲だったのかもしれませんね。自分がいなくても会社の仕事は回ると確信していましたし、よく聞く「休んだら最後、戻るポストが無くなるのではないか」といった育休を取得する男性社員特有の不安もありませんでした。休暇取得の3カ月前に会社側に意向を伝え、出産予定日から休むことにしました。

 段取りさえちゃんとやっておけば1カ月休むくらいどうにでもなる、というのが実感です。月例会の決裁や緊急事態の対応は直属の上司にお願いしていましたし。

 休み中はメールもほとんどチェックしませんでした。数日に1度くらいは見ましたが、返信はしなかった。私が口を出すことで、私がいないものとして進んでいる業務を邪魔してしまうかもしれませんし、「どうしても」という緊急時には携帯電話を鳴らしてもらうことになっていましたから。そうそう、1度だけ携帯電話が鳴りましたが、それも「年間表彰に選ばれたので、その授賞式に出席しないか?」という依頼でした。休暇を優先して断りましたけれども。