日本人の“大会議好き”につける薬はない

『フィンランド流 社長も社員も6時に帰る仕事術』著者で、ノンフィクション作家の田中健彦さん
『フィンランド流 社長も社員も6時に帰る仕事術』著者で、ノンフィクション作家の田中健彦さん

田中さん(以後、敬称略) 数え上げれば切りがないですが、海外から日本に帰ってきたときにばかげた慣習だなと思ったことをご紹介します。それは日本人の会議好きです。しかも、大会議が好きなんですよね。

 大きな会議室に20~30人も集めて、実際に発言するのは上から4人くらいまで。しかも、2時間も3時間もかかるので、発言しない人は眠くなる。午前の会議が終わったら、午後の会議が始まり……。会議の最後には「次回の会議は……」と次回のスケジュールまで決める。こうした予定で手帳がいっぱいになるわけですが、手帳が会議で埋まっていないと不安になるという悪循環です。会議が終わった18時辺りからようやく自分らしい仕事を始め、会議中に昼寝をしているので夜遅くまで頑張れる、というわけです。

 一度、この日本式の会議にアメリカ人の部下に出てもらったことがありました。彼は嫌がったのですがどうしても出てもらわなければいけない状況だったんです。嫌々出席した彼はノートパソコンを持ち込んで会議室の片隅でメールを打っていました。日本人部長が気づいて「おい、君は何をやっているんだ?」と聞かれ、「自分のメールを打っていました」と返答。部長は「けしからん!」と怒り心頭。でもそのアメリカ人部下はこう反論したんです。「日本人のお偉いさんはみんな会議中に寝ているじゃないですか。私は会社のために仕事のメールを打っていたんです」と。部長は二の句が継げませんでした。

 実はこのアメリカ人部下にはどうしても18時には退社しなければいけない理由があったんです。帰宅が遅くなると奥さんに離婚される。離婚されたら全財産を取られるのです。だからどうしたら自分の仕事が18時までに終わらせられるか必死で考えていたんですね。

会議室のイスを撤去し、意思決定の速度を上げた

矢込 環境が違えば意識がここまで違うという事例ですね。ここで、米クックメディカルの副社長で、アジア・パシフィック地域担当ディレクターでもあるバリーの意見も聞いてみたいと思います。

米クックメディカル副社長のバリー・トーマスさん
米クックメディカル副社長のバリー・トーマスさん

バリーさん(以後、敬称略) 皆さん、「忙しい、忙しい(busy)」と言いますが、何にそんなに忙しくしているのか、ということに着目することが大事でしょう。私達は一人ひとりが資源であって、与えられた資源を最も効率よく使って成果に結び付けているかを意識すべきなんです。

 そして、子どもは私達の未来であり、日本の未来でもあります。

 いかに時間を主体的にコントロールするか。それができた人がリーダーになれば、部下は追従していくでしょう。

 私は米国クックメディカルの本社で6年ほど仕事をしましたが、最初のころ、あまりにも会議が長引くことが続いたので会議室のイスを撤去しました。すると会議はすぐ終わるようになり、意思決定の速度も上がったんです。イスだけでなく、食べ物とコーヒーも撤去したことを付け加えておきましょう(笑)。

矢込 ではここで大塚さんに質問です。ワーク・ライフ・バランスを取りやすい業界、取りにくい業界というものは、あるのでしょうか?