「医療業界はワーク・ライフ・バランスが取りにくい」

矢込 医師の皆さんは朝8時前から病院に行ってその日の段取りをし、午前中は外来の患者を診ます。病院によっては、本来ならば外来の診察は12時までであっても、13時、14時までかかることも少なくありません。曜日によっては午後に手術の予定がある場合などがありますが、手術の開始時間が遅れたり、患者の容態によって手術の時間が延びたりするなどして、最終の手術が終わるのが20時、21時を回ることもあります。弊社の営業担当者は、その後で医師と打ち合わせをし、その打ち合わせ内容をリポートにまとめたりするわけですから、当然帰宅は0時を回ることもあるのです。

 心臓血管外科などでは特に、昼夜関係なく手術が入ります。例えば、弊社の作っている商品に「ステントグラフト」という人工血管があります。これを大動脈の手術で使う際、弊社の営業担当者が手術に同席してデバイスの使用をお手伝いをする場合があります。そのときは、夜遅くまで業務に当たることもやむを得ないのです。

 こういった業界的な構造を背景に、どのようにして社員のワーク・ライフ・バランスを保っていけばいいかということは、私達の大きな課題です。ぜひこれからのパネルディスカッションでご登壇者の皆さんにご意見を伺っていきたいと思います。

 次に、パネラーを交えたパネルディスカッションが行われました。

子どもとの時間は親の特権、家事・育児は親の責務

矢込 川島さんは経営者としても多忙な中、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事を務め、家庭では家事・育児を奥さんと分担して行っているイクメンでもあります。なぜこのようなスタイルになったのでしょうか?

「元祖イクボス」こと三井物産ロジスティクス・パートナーズ社長の川島高之さん
「元祖イクボス」こと三井物産ロジスティクス・パートナーズ社長の川島高之さん

川島さん(以後、敬称略) よく聞かれるのですが、逆に不思議なんです。何で皆さんはこういうスタイルではないのでしょうか?(笑) 私は30代で総合商社の管理職になり、その後、子どもを授かりました。かわいい子どもと共に過ごす時間を持てるのは、親としての特権です。そして、妻と家事と育児を分担するのは、家族としての責務です。特権の裏側には責務がある。やって当然じゃん、という話です。あまり答えにはなっていないかもしれませんが。

妊娠・出産のタイミングで、働き方をドラスティックに変えた

矢込 英語で言うところの“eye-opening”(啓発的な、目を見張らせるような)なご回答でしたね。根本的な意識が違うのだということが分かりました。さて、大塚さんはワーク・ライフバランスの共同創業者でもあり、2人のお嬢様のお母様でもあり、創業以来のトップセールスウーマンです。その秘訣を教えてください。

ワーク・ライフバランス共同創業者の大塚万紀子さん
ワーク・ライフバランス共同創業者の大塚万紀子さん

大塚さん(以後、敬称略) 私は創業する前、楽天に勤めていました。当時はかなり長時間働いていましたが、とにかく仕事が楽しくて不満は何一つありませんでした。でも今は、9時30分から17時30分という限られた時間内で最大の成果を出すという働き方をしています。働き方を変えたきっかけは自分の妊娠と子どもの誕生。この2つのために働き方の変革を促されたのです。

 そのときに改めて気づいたのが「時間は資源である」ということ。そして、その資源は絶対に増えることがないということでした。一方でやりたいことは色々あったので、どの時間帯に何を配置するのがベストかを考えました。

 今振り返ってみると、平坦な道の先に新しい働き方があったのではなく、ある時期に、自分自身がどうすればいいかをしっかりと考え、働き方をドラスティックに変えた、という感じです。どう働くべきかを考える時間を持つことが大事で、今でもその時間は大切にしています。

矢込 次に、米国、フィンランド、ドイツでの経営を経験された田中さんに伺います。田中さんがお感じになった、海外の方と日本人の働き方の違いを端的に教えてください。