名作絵本約100作品を生み出した児童文学作家・中川李枝子さん
小さなころから本は大好きでしたが、作家になりたいと思ったことはありませんでした。なりたかったのは「日本一の保育士」です。学校を卒業すると、小さな無認可のみどり保育園で保育士として働き始めました。
保育園で働いていた17年間、たくさんの子どもたちと出会いました。
『いやいやえん』も『ぐりとぐら』も、保育園の子どもたちに向けて書いたお話です。
今の私があるのは、保育園で出会ったさまざまな子どもたちのおかげです。そして保育園で働き続けることができたのは、子どものころから読んできたいろいろな本のおかげでした。
今、お母さんたちと話をしていると、子育てに悩んでいる人が多いことに驚きます。でも子育てに「こうすべき」なんて回答はないでしょう。お母さんは自分の気持ちに素直になって、子どもを育てればいい。子どもの時期はあっというまです。教科書通りかどうかなんて悩まず、育てる楽しみを味わってほしい。自分なりのやり方で、自分の考えに従えばいいのです。うまくできないことがあって当然。得意なことがあり、不得意なことがある。それがお母さんの個性なのですから。
私がお母さんたちに話せるのは、自分が体験したこと、そして子どもたちから教えてもらったことだけです。保育士として17年間働いてわかったのは、子どもはお母さんがいちばん好きだということでした。子どもはお母さんのすべてが自慢。お母さんたちにはぜひそのことを知ってほしい。自分のいないところで、子どもたちがどれだけお母さんの自慢をしているか知ったら、きっとビックリすると思いますよ。