母乳育児をするために大切なのは、「和食中心の生活」「米と水分を取りまくる」「乳製品や甘いものを控える」(どこまで本当なのかは謎ですが)。このへんは、そうつらくなかったんですよね。産後の大変な時期に、あれこれ食べたいと思う余裕はなかったし。

 私を追い込んだのは、「とにかく頻回に吸わせることが大切」「母乳不足だからとミルクを足すと余計に出なくなる」。ここでした。

 頻回授乳が、本当につらかった…。

極度の睡眠不足で正常な判断ができなくなる

 病院では産んで直後の2日間は、完全に徹夜です。退院後もしばらくは、子どもが泣くたび1回につき20分以上、1~2時間おきの授乳です。加えて、少しでも多く母乳を飲ませたくて、子どもが寝ている間は手で必死に搾乳をしていました。

 昼夜問わずこれを繰り返すので、ほぼ寝ていません。肩と背中はパンパンに張り、体力の限界値を超えていました。RPG(ロールプレイングゲーム)でいうなら、HP(ヒットポイント)は常に1です。

 体力面のつらさだけではなく、赤ちゃんをおなかいっぱいにしてあげられていないのでは…との不安もつきまといます。ミルクを飲ませてあげたくても、母乳育児の本には「安易にミルクを足すな」と書かれています。

 そこから自分を責め始めます。

 母乳がたくさん出ないのは頑張りが足りないんじゃないか。私は母親失格なんじゃないか、って。

 今なら、「そんなわけあるか!」と鼻で笑って一蹴できます。でも、あのときは極度の睡眠不足から、正常な判断ができませんでした。

 一度こうなってしまうと、「そのうち出るようになるから、ミルク飲ませなよ」との周囲のアドバイスは全く耳に入らないんです。あの状態をずっと続けていたら倒れていたと思います。家族にも、ずいぶん心配をかけてしまいました。

 母乳不足の不安から解放されたのは、1カ月健診でした。

 わが子の体重は順調すぎるほど順調に増えており、母乳育児が軌道に乗っていたとわかったからです。いったん気が楽になってしまうと、「そもそもどうして母乳にこだわったんだろうか?」と感じるようになりました。

 新生児の貴重な1カ月を追い詰められた気持ちで過ごしたなんて、本当にもったいないことをしたな~と、今となっては思います。授乳は、考え方や体質も人それぞれ。一番大切なのは、ママも赤ちゃんも穏やかな気持ちでいられること。それさえ叶うなら、母乳でもミルクでも混合でも、堂々と選択すればいい。