保育サービスを充実できるかどうかは、社会の維持・存続に関わる重大問題

 離職ないしは休職は、バーンアウトへの「内向き」の対処ですが、それが外に向くと恐ろしい。体罰や虐待の増加となって表れるでしょう。現に、そうなっています。

 保育・教育・介護といった世界は、労働者の「やりがい感情」に支えられている面が強いのですが、それは砂上の楼閣のようなもので、いつ崩れてもおかしくありません。それによりかかってばかりではいけない。やりがい報酬だけでなく、金銭の報酬も保証されねばなりますまい。

 保育所の増設に必要なのは、「土地・建物・人」ですが、確保に難儀しているのは最後の「人」でしょう。保育士不足のため、定員に空きがあるのに子どもを受け入れられない。そんな保育所も多いようです(「保育士、足りない 保育所、空きはあるのに入れない 受け入れ制限、次々」朝日新聞、2016年3月18日)。

 待機児童問題解決には保育士の待遇改善が不可欠なのですが、私が前から思っているのは、保育士の給与アップのための公的な基金を設けたらどうか、ということです。非利用者から反発が出るのは必至ですが、保育サービスを充実できるかどうかは、社会の維持・存続に関わる重大問題です。上の世代は誰しも、下の世代の世話になります。ここまで問題が深刻化しているとなると、「次世代育成税」のような税を創出してもいいように思うのですが、どうでしょう。

 今回は、われわれがお世話になっている、保育士という仕事について考えてみました。保育士さんの笑顔の下にある「見えざる」葛藤について、思いを巡らしていただければ幸いです。

 次回は、乳幼児期に保育所に在所することが、その後の人間形成にどう影響するかを考えてみたいと思います。たとえば都道府県データでは、就学前人口の保育所在所率と小学生の学力・体力は、どういう相関関係にあるか。こんな問題を解いてみたいと思います。