フィンランド人、ミッコ・コイヴマーさんは2010~2015年の5年間にわたり、駐日フィンランド大使館の報道・文化担当参事官として東京に在住していました。奥さんと当時2歳の息子さん、生後2カ月の娘さんと共に来日。東京で生活をしていたミッコさんは、任期中「イクメン大使」という愛称で、講演などを通し自らの経験を基にフィンランドの子育て事情を発信し続けてきました。
 2013年に自身の著書『フィンランド流 イクメンMIKKOの世界一しあわせな子育て』(かまくら春秋社刊)を出版します。当時はまだイクメンという言葉が出始めたころ、フィンランドでの当たり前が、日本の子育て世代に大きく響きました。
 コイヴマー一家にはその後、新たに赤ちゃんが誕生して5人家族に。ミッコさんは昨年9月に任期を終え、現在はフィンランド・ヘルシンキで生活を送っています。新たなるイクメン・プロジェクトのため、再び来日したミッコさんに、日本とフィンランド、パパ目線の子育て事情について聞きました。

夫が仕事一本の生活していたら、子ども、妻のことが理解不能に

日経DUAL編集部 ミッコさんは日本滞在中、「イクメン大使」として様々な講演活動をしていましたね。日本の子育て事情や働くパパ達に、何かしらの疑問があったからなのでしょうか?

ミッコ・コイヴマーさん(以下、敬称略) 私が日本で仕事を始めた2010年ごろ、ちょうどイクメンという言葉が出てきたのですが、当時、大使館の報道・文化担当として広報活動の一環で、フィンランドの子育て事情を紹介する機会を多く持ちました。

 そのとき感じていたのは、日本の働き方はいまだにバブル時代のようだということ。朝から深夜まで多くの人が働いています。1日8時間と割り切って働くヨーロッパの人達から見れば、不合理にも思えます。深夜も会社のイスに居残ることは、仕事の効率を低下させるだけでなく、生きていくバランスにとても悪いのではないかと思うんです。さらには、家族のバランスも崩れていくような気がしました。男性が仕事一本の生活をしていたら、まず子どもの世界は理解不能ですよね。そしていつの間にか、妻のことも理解できなくなってしまいます。

 妻のほうだって、ずっと家庭と子育てに集中をしていたら、夫のこと、そして社会のことが分からなくなってしまう。それって、家族というグループで生きていくうえでとても危ないことだと思ったのです。