夫婦で、職場で行うと、相手の価値観に気づく

 このワークは夫婦で一緒に行ってもいいでしょう。

 夫婦というものは、分かり合えているようでいて、案外、分かり合えていないことがたくさんあるものです。過去に互いに話していたはずのエピソードでも、相手はそのエピソードに★がついたのを見て、「そんなに大きい出来事だったのか」と気づくかもしれません。

 また、子どもの中学受験など、どうしても価値観がかみ合わないときに、互いのかたくなな思いの背景に、子どものころのエピソードが影響している、と気づくことによって相手の気持ちを理解できることもあります。

 私はよくこのワークを小グループで実践してもらいますが、結構わいわいと盛り上がりますね。職場で行うと、相手をより理解できるようになるだけでなく、仕事上のメリットも大きいものです。

 例えば相手にある仕事をお願いするときにも、相手がどういう価値観を持っていて、どの部分が繊細で、どの部分が鈍感か、といったことが分かると非常に意思疎通がしやすくなります。がさつな物言いをする人がいて、それにいちいち腹を立てていた人も、このワークをすることによって「こういう環境で育ったからだ。この人に悪気はないんだな」と理解することによって人間関係がスムーズになったという事例も聞きます。

 このように、人生曲線は自己理解を深めるとともに、他者への理解も深めることができる、非常にお役立ち度の高いツールです。

 自己理解が深まると、子育てや職場で次々に起こるハプニングに翻弄される感じが少なくなってくるはずです。「自分はこんなふうに過去を重ねてきたんだから、弱い部分もあってしょうがない」そうやって自分の“急所”を認めることができると、無理なく目標のハードルを下げることができるようになります。

 実は私も、ばりばりの体育会系で親は教師、かつては、自分にも他人にも厳しいタイプの人間でした。防衛大学校でさらに鍛えられ、幹部候補として自衛隊に入ったときに、「こうあるべき」という理論だけで動くような単純なものではない現実に直面し、部下から孤立してしまったことがあります。

 そんなときに上司が「建前を捨ててもっと本音で勝負しろ。部下に甘えてもいいんだ。みんな同じ人間なんだから」と教えてくれたのです。それからというもの、ずっと私が自分に言い聞かせてきたのは、「他人に優しく、自分にはもっと優しく」という自前の格言です。

 あなたもぜひ、この格言を心に留めてみてください。昨日も、おとといも、もっと前も、頑張ってきたあなたがいる。それを認められれば、今より楽な気持ちで、子育てにも、仕事にも取り組んでいけることでしょう。

(取材・構成・イラスト/柳本 操 イメージ写真/鈴木愛子)