節約、本当にできますか?

 基本的な生活費を削って住宅ローンに充てればいいと思う人もいるかもしれません。しかし、すでに説明したように基本的な生活費は家賃・食費・光熱費・教育費・生命保険料などですが、どれも極めて削りにくいモノばかりです。

 家賃は住宅ローンとして増加することになりますから節約対象にはなりません。光熱費の節約はやったことがある人は分かると思いますが、1割削るだけでも一苦労で、その割に効果は限定的です。こまめに電気を消したり水を止めたりする程度ではほとんど支払額は変わりません。

 食費を削れば生活の満足度はかなり下がるうえに、光熱費と同様に決して大幅に削減可能な箇所ではありません。1万円減らすだけでも大変です。外食費は食費の中でも削りやすい箇所になりますが、通常はお子さんが生まれた後に家を買うのが一般的な流れです。小さいお子さんを連れて頻繁に外食に行く人はあまりいません。家を買うタイミングで外食費はすでにかなり減っている状況でしょう。

 教育費は保育園や学費ですから、支出額を自身で決められません。結局、基本的な生活費で唯一大幅に削れる箇所は生命保険に入り過ぎている人の保険料くらいです。

 このように基本的な生活費を削ることは非常に難しいのですが、できるのならもちろんやってくださいとだけ伝えておきます。これは先ほど挙げた節約レシピや格安携帯等による節約術になると思いますが、これらの話はネットで調べれば無料で情報が手に入ります(FPが説明することではありませんので、普段の相談でまず話すことはありません)。

 結局最後にはリスクを取り、趣味的な支出を削ってでも家を買いたいか?という意思決定の話になります。

予算を下げれば三ツ星レストランに毎月通える

 以前、1億円を大きく超える高額な物件を検討しているご夫婦がいました。まだお若いながら非常に収入が高く、貯金の額も考えれば買えないことはない価格でしたが、やはり高額であることは間違いありませんし、価格を抑えればリスクは下がります。

 話を聞いていると、クラシックコンサートや野外フェスティバルなどの音楽鑑賞や、旅行に行ったり食べ歩きをしたりといった趣味にもかなりお金をかけているようでした。

 そこで5000万円くらい予算を下げてみてはどうか、と提案をしました。同じクラスのマンションを買うことは当然できませんが、同じ地域に住むだけであれば、それくらい予算を下げても買うことはできたからです。

 一例として、5000万円あれば今後50年間毎月三ツ星レストランに通うことができますよ、という話をしました(1カ月当たり8.3万円)。もちろんレストランに限定する必要はありませんが、それが旅行でもコンサートでも老後資金でも、あるいは収入減少のリスクを考慮した予算削減でも、好きな用途に使う、あるいはリスクに備えることができます。しかし家につぎ込んでしまうと支払いは固定されます。

 このご夫婦では、それなら予算は下げたほうがいいか、という結論になりました。

 一方、似たような状況で別のご夫婦は、ウチはやっぱり良い家が欲しい、妥協したくない、と高価な物件を買うことにしました。理由としてはローンの支払いがあれば他の支出を無理にでも抑えざるを得なくなるから、意志の弱い自分達は結果的にそのほうが将来立地の良い物件という資産が残るという判断でした。予算を下げてもその分だけ将来手元にお金を残す自信はないと言います。