予算を捻出するには「生活水準」を落とす

 ではどのようにすれば支出を削ることができるのでしょうか。それは「生活水準を落とす」ということです。

 「無駄を削る」という言葉には今の生活を変えずにお金を捻出できる、という都合の良い考えが潜んでいます。そういう天からお金が降ってくるような話はない、ということです。お金を捻出するには痛みを伴う支出の削減、つまり「家計のリストラ」をやらないといけない、ということになります。

 支出を削りやすいポイントは基本的な生活費ではなく、お小遣い的な支出です。まずは家計の構造から説明したいと思います。

 収入から支出を差し引くと残りが貯金となります。支出は「基本的な生活費」とそれ以外の「お小遣い的な支出」の2つに分けられます。

 基本的な生活費とは、家賃、光熱費、食費・雑費、教育費(保育園や学費)、生命保険料など、「ないと生活ができないモノ」です。お小遣い的な支出は、趣味や洋服、高価な外食、旅行、子どもの習い事(※)など「なくても生活ができるモノ」です。

※習い事をどちらに分類するかは考え方によって変わりますので、お好きなほうに入れてください。

「自由に使えるお金」をローン返済に回す

 例えば、2人合わせて月収50万円、基本的な生活費が30万円の場合、残りは毎月20万円となります。この20万円を趣味に使うか、子どもの習い事に使うか、貯金としてためるか、自由に割り振ることができます。

 やっと予算の話ができますが、今まで自由に使えるお金として分類されていた20万円の一部を住宅ローンの返済に充てれば予算をオーバーした家を買うことができます。ただし、その際は子育て費用の増加と時短勤務等による収入減少も考慮する必要があります。

 具体的な費目でいうのなら、旅行や帰省、洋服、外食、お小遣い、その他趣味に充てる費用を減らして住宅ローンの返済に充てる、ということになります。

 ここで捻出した資金は、元々「なくても生活ができるモノ」に充てていたお金です。そこを「ないと生活ができないモノ」の支払いに充てるわけですから、お小遣いや趣味に関する支出など生活の潤いともいえる部分の支払いが減ったうえに、支払いが固定されてリスクも高まります。

 これは企業でいえば人を雇うとか工場を建てるといった固定費の増加にあたります。固定費は企業ならば売り上げがゼロでも発生する費用、家計ならば「生きている限り、収入がゼロでも発生する費用」と考えてください。

 企業の潰れやすさは固定費が多いか少ないかで大きく変わります。固定費が増えるほど潰れやすい、破綻しやすい、という状況は企業でも家計でも変わりません。

 例えば、毎月15万円程度なら支払いに問題はなく貯金もしっかりできそう、という状況で4000万円のローンを組むなら、先ほど計算した条件ではローンの返済額と毎月の諸費用の合計額がおおむね15万円程度になります。そこに1000万円の予算が上乗せされれば、ローンの増加分である3万円分の支払額増加となります(高額物件ほど毎月の管理費が高い傾向にあるので、さらに上乗せされる場合もありますから注意が必要です)。

 今後ローンの支払いが終わるまで「なくても生活ができるモノ」や貯金に回していた金額のうち、3万円が生活費に回ると考えてください。それで問題のない家庭は予算を増やしても大丈夫、ということになります。

 1カ月で3万円程度なら大丈夫では……?と思いがちですが、年間で36万円、35年で1235万円です。10年後に360万円が手元にあるか、35年後に老後資金として残る貯金が1235万円あるかどうか、と考えれば「人生を左右する大金である」と説明したことも分かっていただけるのではと思います。

 ちなみに、高価格でもいいから公立学校の教育水準が高い場所にあえて家を買う、という判断をする人もいます。これは私立校に通わずに済むように、教育費を高い住宅価格で相殺するようなイメージです。