予算を決める基本的な考え方は「バッファー」

 過去の連載や書籍では「バッファー(緩衝剤)」という考え方を紹介しました「住宅購入予算は年収の5倍まで」は正しいか?」)家を買うときに発生する金銭的なダメージを考慮して、耐えられる範囲で予算(ローンの支払い額)を決める方法です。

 具体的には、家を買うことで賃貸と比べて住宅の費用(住宅ローン)はいくら増えるか、子育て費用がいくら発生するか、産休・育休・時短勤務などで収入がいくら減るか、この3つの合計額を貯金可能額から差し引くと今後の収支の変化が分かります。子育て費用や産休・育休などを考慮する理由は、家を買うタイミングが妊娠・出産・時短勤務と重なることが多いからです。

 バッファーは影響の大きい3つのポイントに絞って計算しますが、節約は考慮していません。欲しい家を買えるなら多少我慢して節約してもいい、と考える人はいると思いますが、後述するように無駄遣いを減らして節約することは決して簡単ではないのです。

無駄遣いの「節約」が難しい理由

 無駄遣いを減らす、という言い方がありますが、「自分は無駄遣いをしている」と自覚している人はどれくらいいるでしょうか。「無駄」と「削ることができる支出」は別物です。

 自分は過去に多数の家計相談にのってきました。貯金ができない人に家計簿を見せてもらいながら、一つ一つ支出状況をチェックしたことは何度もあります。

 年間の生活費が600万円なら1割削ると60万円、2割削れば120万円も浮かせることができる!という計算自体は簡単です。ただ、このケースで1割削るならば1カ月当たり5万円も削ることになります。5万円も無駄な支出を垂れ流しているような人はいませんし、無駄だと認識していれば人に言われるまでもなく、支出を減らしているでしょう。

 会社の飲み会に付き合いで参加してるけどあれは無駄、衝動買いで洋服を買ってしまうのでやめれば浮かせることができる、という人もいると思いますが、これらも本当にやめたいのであればとっくにやめているはずです。

 付き合いの飲み会は、お酒の席で仕事の話をするなどそれなりに意味があるから参加していることもあるでしょうし、断ると仕事に支障が出るから仕方なく、という人も少なからずいるでしょう。洋服の衝動買いもストレス解消になっているかもしれません。つまり全く無意味な支出ではないからやめていないわけです。ダイエットと同じで、やめたいけどやめられないことはお金の面でもたくさんあります。

 結局、本当の無駄はお金を捨てる以外にない、ということになります。長い前置きになりましたが、節約レシピとか格安携帯の話をする前に、まずはここを理解しない限り支出を削ることはできません。