「よく塾の先生も親御さんも『しっかり勉強しなさい』と口にします。でも、『しっかり勉強する』ってどういうことでしょう? 大人でもうまく答えられませんよね。であれば、子どもだって分かりません」

 「私は『しっかり勉強する』にはいろいろな要素があると思います。例えば、計算問題なら『正確に』『スピーディーに』解くことが求められます。一方、考える問題はきちんと『理解し』『納得する』ことが求められます。また、今は『覚える』学習をするのか、『考える』学習をするのか、意識して取り組むことも大事です」

 「家庭で算数を学習するときは、取り組む問題ごとに、『今は覚える時間だ』『じっくり考える時間だ』など意識して取り組ませるようにしましょう。おすすめはカードに書き出して“見える化”することです。これを意識して取り組むか、取り組まないかで、鈴ちゃんの今後の算数は大きく変わってくるでしょう。一番やってはいけないのは、無自覚にただひたすら問題を解くことです」

「しっかりと(勉強する)」という言葉には「正確に」「スピーディーに」「大量に」「理解して」「集中して」などの異なる意味合いがある、と西村先生は言います
「しっかりと(勉強する)」という言葉には「正確に」「スピーディーに」「大量に」「理解して」「集中して」などの異なる意味合いがある、と西村先生は言います

知識を定着するために必要なのは「納得感」

 さて、2時間が経過しました。

 始めたときは緊張気味だった鈴ちゃんもすっかりリラックス。それがつい態度にも表れてしまい、目は机に近づき過ぎ! 姿勢もダラッとしてきました。

 「鈴ちゃんは、集中してくると、どんどん目が机に近づいて来るようだね。でも、目が近いと視力が低下してしまうだけでなく、物事を狭くしか見られなくなってしまうよ。特に図形の問題などは、俯瞰してみることで気づくこともあるから、机から30cmは開けるようにしようね」

つい姿勢が悪くなり、ノートに顔がくっつかんばかりになる鈴ちゃんに、「まずはこのメガネケースの長さくらいは、ノートから目を離そう」とアドバイス
つい姿勢が悪くなり、ノートに顔がくっつかんばかりになる鈴ちゃんに、「まずはこのメガネケースの長さくらいは、ノートから目を離そう」とアドバイス

 「それと、いつでも手に鉛筆を持っていること。鈴ちゃんの場合、作業に取りかかるまでにちょっと時間がかかるから、『気づいたら書く』『気づくために書く』習慣をつけよう。それには、鉛筆は常に手にしておいたほうがいいね」

 授業を終えて、鈴ちゃんに感想を聞いてみました。

 「塾の算数の先生からは『公式を覚えなさい』とは言われるけれど、公式の意味まではあまり説明してもらっていません。そんなときは『ま、こんなもんでしょ』と半ばあきらめて覚えようと努力をするだけでした。でも、今日、西村先生に説明してもらってすっきりしたし、これだったら暗記できそうだなと思いました。これからは西村先生に言われた通り、暗記しなくてはいけないものは、しっかり覚えていきたいです」

 お母さんの佳奈美さんはこう話します。