女性は結婚・出産で退職する社風の中、「私が先例を作らなければ」と奮起

小酒部さやかさん
小酒部さやかさん

―― 現在もそのような働き方をしている会社も少なくありません。会社の変革には、そのときの高橋さん自身の体験が大きかったのですね。

高橋 10年前まで、私が勤務する本社では育児休業を取得する女性がいませんでした。当時から私は総務課に勤務していて、職場環境の改善を進めるべき総務課の自分が先例を作っていかなければ後輩達が続かない、会社が変わらないと思いました。

 そんなころ、結婚・妊娠し、育児休業取得を考えました。上司や同じ部署の仲間はとても理解がありましたので、自然な流れで取得となりました。

 ちょうど時を同じくして「次世代育成支援対策推進法」が設定されたこと、また管理部の責任者だった上司に小さいお子さんがいて育児に理解があったこともあり、育児休業取得を勧めていただきました。世の中の流れと会社のあり方をマッチさせ、企業風土を変えようという思いが、会社側にもあったのかもしれません。

 当時はフロアでの喫煙が普通にありましたが、妊娠が分かったときにフロアを禁煙にしていただくような配慮もありました。

 そうして私は無事1人目を出産。子どもが1歳になるまで育児休業を取得し、育児時短勤務で復帰しました。

 会社を休むことで迷惑を掛けているという気持ちもありましたが、こういった配慮もありましたので、復帰して頑張ろうという気持ちになれたのです。

―― きっと高橋さんがいることで理解が高まった一面があるのでしょう。あるいは、声を掛けやすい雰囲気をつくることができた。これはなかなかできないことですね。後輩が続くようにとの思いがあったということですが、復帰後に取り組まれたことを教えてください。

くるみんマークの取得を目標に、明確な数値目標を掲げた取り組みを開始

高橋 育児休業から復帰したとき、次世代育成法の施行により誕生した「くるみんマーク」の存在を知ったのです。労務管理に明確な目標を持っていなかった弊社は、くるみんマークの取得を目標に掲げ、育児休業の推進、有給取得の推進、時間外労働の削減、など明確な数値目標を掲げて取り組みを始めました

 くるみんマークを取得するためには、「有給取得率○%」「男性の育児休業者1名以上」「女性の育児休業取得率○%」といったように具体的に数値目標を設定し、行動計画を出さないといけません。

 こうした行動計画に沿って取り組んでいけば会社も変わっていけるだろうと考えました。そこから具体的な行動を考え、会社の方針に盛り込んでもらうよう働きかけをしていくうち、計画に沿って取得率が上がり、男性が休みやすくなるなど会社が変わっていきました。

 ホシザキグループでは毎年「社員満足度調査」を実施しているのですが、以前はグループ内で最下位に近い順位でした。

 マーク取得のための取り組みを続けて現在約9年になりますが、売り上げは毎年右肩上がりになり、ここ4年間、社員満足度調査ではグループ内でもトップクラスを維持しています。