起業するまでの経緯や仕事と家庭の両立についてなど、多くの壁を乗り越えてきたママ起業家や社長にインタビューする「私が壁を乗り越えたとき」。第2回は、託児付きの子連れランチやお出かけスタイルを提案している株式会社ここるくの代表取締役、山下真実さんを紹介します。

経営者の両親に育てられ、どうすればうまくいくかを考えるように

 両親や親戚など、周囲にはサラリーマンがいない家庭環境で育った山下さん。

 「父も母もそれぞれ事業を経営していました。その影響もあり、自分もいつかビジネスを切り盛りしたいと自然に人生を描いていました」

 子どものときに父から教えられたことは、今でもよく覚えているといいます。

 「『お小遣いが100円あり、お店に行ったら100円のボールペンと100円のノートがある。どちらも買いたいと思ったときに、真実はどうする?』と父に聞かれたんです。その時、『よその家やったらボールペンにするか、ノートにするか決めろって言われるかも知れん。でも、お前はどっちにするか悩まんでええ、どうやったら2つとも買えるようになるかを考えなさい』と教わりました」

 小さい頃から課題があれば解決しようと考えるクセがつき、それが山下さんの起業家マインドの根っこになりました。

山下真実 株式会社ここるく代表取締役

 京都府生まれ。関西学院大学 総合政策学部在学中に学生ベンチャーを立ち上げ、卒業後は大手メーカーや外資金融などで経験を積む。2011年に第一子を出産し「今まで気にも留めていなかった当たり前の事が、産後は一気にできなくなるんだ!」と感じたことがきっかけとなり、現代に合った子育て支援を実現するため、2013年に株式会社ここるくを設立。子連れお出かけ支援事業や、育休明け復帰支援事業などを手がける。ミズーリ大学カンザスシティ校 経営大学院卒(MBA)

社会勉強として日本の製造業に就職後、アメリカでMBAを取得

 大学在学中に、FAXでやり取りをする家庭教師事業を立ち上げ。卒業を機に起業を考えましたが、山下さんが選んだのは大手メーカーに就職するという道でした。

 「自分は会社員であり続けることはないと思うけれど、社会勉強として就職しようと思いました。周囲に会社員がいない環境で育ったこともあり、将来的には起業するにしても、会社勤めとはどういうものか一から勉強したいと考えました。どうせなら日本企業らしい会社に勤めようと思い、国内大手製造業に就職しました」

 仕事でも成果を出し会社員としてうまくいっていましたが、ビジネスについて学びたいという想いが強くなり、2年ほどで退職。MBAを取得するため、アメリカのカンザスシティに3年半留学しました。

 「経営学を学んだ後、翌年からMBAに進学しました。クラスの3分の1が合格できないといわれているくらい、周囲には敬遠されていたファイナンスの授業が楽しくて。そこから金融業界に興味を持ちました」

 留学中に海外の留学生を対象にした就職イベント「ボストンキャリアフォーラム」に参加。複数社の投資銀行からオファーを受け、米系投資銀行JPモルガンで働くことを決めました。