3月17日のお昼前、東京都千代田区にある東京国立近代美術館に、赤ちゃんを連れたママ達が集まりました。解説ボランティアであるガイドスタッフが参加者の発言や感想を引き出しながら、美術作品を鑑賞していく「対話による鑑賞会」に参加するためです。

 参加したのは皆、育児休業中のママ。美術作品を見て語り合いながら、参加者は何を感じたのでしょうか。鑑賞会に密着しました。

「実際に行ってみたい作品」はどれですか

 今回、集まったママは7人(うち、赤ちゃん連れは5人)。産前・産後の女性達の身体的ケアなどのサポートを目的としたNPO法人、マドレボニータの卒業生有志が、「職場復帰を控えるママ達の、自己啓発の機会をつくりたい」と企画。要望を受けて美術館側が鑑賞する作品を決めたり、ベビーカーの貸し出しなどの準備を整えたりしたうえで、今回を含めこれまで5回実施。延べ35人が参加してきました。

 ママ達に同行するのは、ボランティアのガイドスタッフである川上好美さん。見学の前に、川上さんより早速クイズが出されました。

 「美術館には多くの子ども達が訪れます。子ども達にお願いすることは何でしょう」

 「作品に触らないこと?」
 「そうです、なぜ作品に触ってはダメなのですか」
 「傷むと大変だからです」
 「他には何があるでしょう」
 「声を出したり走ったりしないこと?」
 「そうですね、なぜでしょうか」

 「今挙げていただいたことは、一つは作品を守るために重要です。でももう一つ理由があって、それは子ども達自身を守ることにつながるからです。美術館には、絵画のほか鉄の塊のような作品、トゲトゲの作品なども展示してあります。走ったり騒いだりすると、けがをする危険がありますよね」

 川上さんの説明に、ママ達はみんな納得顔。発言することに慣れてきたところで、エレベーターで3階に上がり、いよいよ鑑賞会がスタートします。現在開催中のMOMATコレクション特集「春らんまんの日本画まつり」で、まず向かったのは日本画のフロア。そこには、菱田春草(1874~1911年)の風景画などの絵画が多く展示してあります。

 「この部屋で、『ここに行ってみたい』という絵を一枚探してみてください」

 川上さんが促します。