「高額療養費制度」は8割弱が利用。「傷病手当金制度」の利用は3割

 経済的な保障制度の利用率も注目に値する。同一月にかかった医療費が一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合に、その超えた部分が払い戻される「高額療養費制度」という制度がある。がん治療では医療費の自己負担額が高額になる場合があり、そんなときにこの制度を活用すれば経済的負担を軽減できる。この利用者は全体の75.2%となった。一方、「傷病手当金制度」の利用者は32.3%にとどまった。これは病気やけがで働けなくなった場合に、被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度だ。業務外の病気・けがによる療養のために会社を休み、給与を受けられないときに支給される。

 「傷病手当金制度について『会社からの説明があった』と答えた人は34.7%しかおらず、説明を受けなかった人の51.3%が『知らなかったので利用しなかった』と答えていました。この機会に、ぜひ知っていただきたいと思います」(野田さん)。

職場に求められる支援は、柔軟な働き方

 「がんの治療をしながら仕事を続けるために必要だと考える、勤務先からの支援」を聞いたところ、「出社・退社時刻を自分の都合で変えられる仕組み」(36.6%)、「がん治療に関する費用の助成」(35.6%)、「残業をなくす/減らす仕組み」(23.3%)、「1日単位の傷病休暇の仕組み」(22.9%)が上位4位となった。「がん患者には長期休暇を取って治療に専念する必要があるというイメージが根強いと見られますが、必ずしもそうではなく、勤務時間を自由に変更できるような柔軟な働き方は、育児中社員に限らず、療養中の社員からも求められていることが分かりました」(矢島さん)。

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政策研究レポート「がん治療と仕事の両立に関する調査」 http://www.murc.jp/thinktank/rc/politics/politics_detail/seiken_160304

(取材・文/日経DUAL編集部 小田舞子)