娘達が生きる時代は、今とは全く違う世界になっていると思います。これもお受験をしない理由です。

 数年前に発表されたアメリカのある研究によると、「小学校に入学した子どもの65%は、大学卒業時に今は存在しない職業に就く」そうです。今、炭鉱夫の方っていませんよね。エネルギーの主流が移り変わってきたから。逆に、昔はウェブデザイナーなんて職種は存在しませんでした。

 この研究予測が日本でその通りになるかどうか分かりませんが、職業は時代によって栄枯盛衰があり、そのサイクルはどんどん早まっています。僕の仕事も、いつまであるかは未知です。テレビメディアがあり、お笑いというニーズがあって、今はやれているだけです。

 娘が何になるかはまったくの楽しみであり、同時に、娘はそんな時代をサバイブしていくわけです。

子育てのゴールは子どもが親元から巣立つとき

 人生の初期段階で私立の学校に入れるかは、親の財力次第という面もあります。そういう限定的な立場の人達の集団に最初から入ることで、見えなくなることは確実にあります。学校を出ればいろんな立場の人がいてそれが社会であり面白さなのに、その前段階で限られた人間しかいないフィールドで育つことは、リスクでもあると思います。

 「魚を与えるな、魚の取り方を教えろ」というのが、子育てで大事にしている考え方です。

 どこかの国のことわざなのかな。親がやるべきはお金や地位をそのまま与えることではなく、お金や地位を子ども自身でつかみ取る力を身に付けさせることであると。

 子育ての最終地点は子どもが巣立つこと。娘には、「一人で社会に出ていくために、そしてその大海で泳いでいくために、お父さんとお母さんは手伝いをしている」と、もう少し大きくなれば、言葉でも伝えていくつもりです。

 どんな職業に就こうが、構いません。社会に貢献して、生活ができる力さえ身に付いていればいい。そのための親の役割を考えたとき、わが家にはお受験は必要ないんです。

(取材・文/平山ゆりの 撮影/片桐寿憲)