子どもの力を信じる親でいたい

 「信じている」って、すごくパワーのある言葉ですよね。

 登山家の栗城史多さんが、世界最高峰の雪山にチャレンジしたときのエピソードが、印象に残っています。

 命の危険がある登頂にこれから向かうとき、ベースキャンプで父親に連絡を取るタイミングがあったそうです。「自分は死ぬかもしれないけれど、どうしても登りたい山がある」と報告したところ、お父さんはこう言ったそうです。

 「きみを、信じている」

 僕はそれを聞いたとき、すごい、と感銘を受けました。子どもの力を信じてくれる親の存在は、それだけで子どもにとって大きな力になるのではないでしょうか。

 僕自身、両親から多大な期待を寄せられ育ちました。勉強が好きだったことでその期待も大きく、芸人になりたいと伝えたときはすごく反対されました。特に父親は、自分と同じ保険業界に進んでほしいと願っていましたから。ただ、最終的には両親は信じて応援してくれていたのだと、今振り返ると思いますね。

 「おまえには無理だ」「才能はないだろう」といった否定的な言葉を両親は、一度も口にしたことがないんです。例えば、思春期って自分の容姿を見て自己嫌悪を抱くことってありますよね。そんなとき、母親は「そんなことない! あなたはかっこいい!」と褒めちぎっていましたよ(笑)。

 親バカだといわれるかもしれないけど、親だけは無条件に子どもを認めることが大切だなって思います。自分の存在を誰かに強烈に肯定されると、その人は前に進むことができるのではないでしょうか。そんな人が身近にいて、僕は幸せだったと思います。

 早期教育でお受験をさせてしまうと、反対のメッセージを発する可能性もあるのかもしれません。子どもが後々、「あなたが自分で学歴を獲得していくとは思えない。だから、レールを敷いた」と受け取りかねないですよね。