育児をすると、仕事がデキる男になる

豪田 その話で思い出したんですけど、父親が育児をすることによるメリットってあると思うんです。究極的には“仕事がデキる男”になれるんじゃないかなあって僕は思っているんです。

 どういうことかというと、僕は普通の男性と比べると、赤ちゃんと一緒に過ごす時間がとても長かったと思いますが、それでも最初は全く分からないことだらけです。でもだんだん「何で泣いているのかな?」といったことが分かるようになってくる。男性は分析的思考が得意な人が多いから、例えば、「オムツを替えたほうがいいのかな」とか、「おなかがすいたのかな」とか、「居心地が悪いのかな」「眠いのかな」とか。そういうことを色々と分析していくと、赤ちゃんが泣く理由というのは5つくらいのパターンしかないことがだいたい分かってくるんですよね。

 さらに、その能力が発展していくと、今度は「奥さんが何を求めているのか」ということも感覚的に分かってくるようになるんですよ。「あ、ここはオレがこう言ったほうがいいのかな」とか、「今、赤ちゃんの世話をするよりも、掃除をしたほうがいいのかな」とか。そういった察知できる感覚というのが研ぎ澄まされてくるようになります。

 そうやって能力を高めておいて今度は会社に戻ってみると、上司が言っていることだとか、同僚が言っていること、部下が求めていることが感覚的に分かるようになってくるのではないかって思います。さらに、その先には、“お客様が求めていること”すら、感覚的に分かるようになるんですね。

 男性というのは「仕事がデキるようになりたい」と考えると、左脳的な論理的思考に走りがちです。そこで、MBAだとか、マーケティングだとか、プロモーションだとか、そっちの勉強ばかりしてしまいます。でも、左脳的な勉強をしている人というのは、ごまんといる。

 でも、赤ちゃんとずっと一緒にいることで右脳的な感性を磨いて、それを仕事に生かそうとしている人というのはほとんどいない。だからこそ、ものすごく穴場なんですよね(笑)。そういう意味で僕の理論では、男が育児をすると、仕事がデキるようになるっていう(笑)。

鈴木 それは面白いですね! 新しい!!

豪田 お父さんが育児をすればするほど、ものすごく伸びる能力がたくさんあるんじゃないかと、僕は思いますね。

鈴木 最近、雑誌などを読んでみると「出世しない生き方」みたいな特集があったりしますが、僕も子どもが生まれてからはそっち寄りになりました。これまでは自分の中で「こういうことで成功したい」といった気持ちがあったのですが、それが割り切れるようになってくるんですよね。

 なぜなら目の前に、わが子という大切なモノがあるからです。出世だとか成功だとか、そういったことを切り離して考えられるようになりましたよね。まずは目の前のことが大事だっていうことで、物事の優先順位が変わっていった。そうなると相乗効果で仕事に対して、よりピュアに向き合えるようになったんじゃないかと思っています。