育児先進国の北欧でも、父親の出番は子どもが大きくなってから

豪田 おさむさんが「父親は最初はやることがない」とおっしゃいましたけど、僕も娘が生まれた後の半年くらい育休を取ったんですね。すると、すごく母親の気持ちが分かってきたので、実は去年、もう1回“第2次育休”ということで育休を取りました

 今の日本では、育休が法的に認められているのは最初の1年間ほど。子どもが1歳過ぎてから再び育休を取るという制度はないんですよね。なぜ、僕が同じ娘で2回目の育休を取ったのかというと、北欧の国、スウェーデンとかノルウェー、フィンランド、デンマークに半年前くらいに2~3週間ほど取材に行ったことがきっかけでした。

 当時は北欧に関するテーマで何か映画を作れないだろうかという気持ちだったのですが、行ってみたら、北欧は完全に育児先進国だということが分かりました。男性の出産の立ち会い率も育休取得率も9割を超えているんですよね。

 それで、いろんな人にインタビューしてみたら、そんな育児先進国である北欧の父親でも、最初の1年間はあまり育休を取らないと言うんですね。「なぜ取らないの?」って聞いたら、おさむさんが言うように、「だってオレら、やることがないから」と。

 最初の1年間はやることがないけれど、その代わり、子どもがもうちょっと成長して動き回ったり、話せるようになったりして、一緒に遊べるようになってからが、まさに父親の出番なんだっていう考え方なんですよね。

子どもを通して、夫婦の形を考えるように

豪田 同じ北欧でも、細かい部分では制度が違うのですが、だいたいどこでも子どもが8歳くらいになるまでの間に合計1年分の育休が取れるという話を聞いて、「だったら僕も娘が8歳になるまでの間に、もう1回、育休を取ってもいいのかな」と思って、取ってみたんです。

鈴木 僕は最初「やることがない」って思いはしましたが、1カ月間、妻のお母さんが手伝ってくれるのを見ていて「自分に何ができるんだろう?」と考えて、毎日、料理だけは作ることにしました。

 やってみて分かったことは、自分にできることっていうのは、子どもの世話はもちろんなんですけど、それ以外では、奥さんのストレスを少しでも減らしてあげたりとか、ちょっと気分をプラスにしてあげたりすることくらいなのかな、と。

 そう思って自分なりに考えてやっていると、自然と夫婦間のコミュニケーションが取れるようになっていくんですよ。今までのままなら、仕事に出ると家に帰るのも遅くなるし、ヘタすると、子どもが起きているときに会える時間なんて、30分とか15分なんていうことになりかねないですよね。

 だから、子どもが0歳から1歳までの時期に、子どもを通して家族の形をジックリ考えてみるとか、夫婦間のコミュニケーションをしっかり取れるようになったということが、ものすごく良かったなあと、今、思っています。

 子どもが生まれてからは、結構時間を割いて子どもと向き合っていますが、人生で最終的に行き着くところは、やっぱり夫婦じゃないですか。子どもは大きくなって大人になったら離れていってしまうことのほうが多い。そうなったときに夫婦でちゃんと向き合っていないと、大変なことになりますよね。

 熟年離婚でもしない限りは、ずっと一緒に暮らすわけで、やがてどちらかが死ぬことになりますが、もしかしたら、僕のオムツを奥さんに替えてもらわないといけないときが来るかもしれないですから。そんなことを考えると、やっぱり、子どもを通して“夫婦の形”というものも、ものすごく考えるようになりました。