ドキュメンタリー映画『うまれる』。「子どもは親を選んで生まれてくる」という、胎内記憶をモチーフに、4組の夫婦の物語を通して「自分達が生まれてきた意味」「家族の絆」「命の大切さ」「人とのつながり」を考えさせられるこの作品が2010年に公開されてから丸5年が経った。自主上映会を中心にシリーズ2作目となる『ずっと、いっしょ。』を含め、総視聴者数は60万人を突破している。

3月5日には映画『うまれる』の5周年を記念したイベントが東京都世田谷区の玉川区民ホールにて開催され、「命と家族」をテーマにパネルディスカッションが行われた。登場したのは、バースコーディネーターの大葉ナナコさんをナビゲーター役に、同作品の豪田トモ監督をはじめ、胎内記憶などを調査しつつ“豊かな人生の考え方”を提唱する産婦人科医・池川明さん、“父勉”中で、テレビドラマ『生まれる。』の脚本も手掛けた放送作家・鈴木おさむさんの3人。同作品のモチーフとなった胎内記憶の話をはじめ、妊娠・出産や父親の育児・育休、家族や親子関係など、様々な話が飛び出した。今回は、そのディスカッションの一部をダイジェストでお届けします。

親子関係を改善したいと思って作った映画

左から大葉ナナコさん、豪田トモさん、池川明さん、鈴木おさむさん
左から大葉ナナコさん、豪田トモさん、池川明さん、鈴木おさむさん

豪田トモ監督(以下、敬称略) この映画『うまれる』シリーズをDVD発売ではなく、各地での自主上映会という形で広めることにこだわってきた理由は、映画の上映を通じて地域をつなげて、同時にその地域にいる人達をもつなげていきたかったからです。

 この映画の公開は2010年なので、今年で丸5年。シリーズ2作目の『ずっと、いっしょ。』も含め、今まで見ていただいた方の延べ人数は、先日数えてみたら61万6874人。多くの方に見ていただくことができました。たくさんの方に支えられてここまで来れたと思っています。今回のイベントを開催しようと思ったのは、皆さんにブログやネットを通してではなく、直接、お礼を申し上げたいと思ったからです。

 もともと、なぜ、僕がこの映画を作ったのかといいますと、出産に感動して、その素晴らしさを伝えたいからということではありませんでした。いろんなところでもお話ししていますが、僕は親とあまり仲が良くなくて、親子関係を改善したいと思って作ったんです。

 映画を作りながら、いろんな登場人物の方達の出産について体験させていただくうちに、「僕もこうやって生まれたんだなあ」「こうやって育ててもらったんだなあ」ということを、やっと“心で感じられる”ようになった。それまで、親に対してはいろんな複雑な思いがありましたが、「産んでくれてありがとう」という気持ちを初めて持てるようになりました

 そんなときに、ちょうど、この作品のプロデューサーでもある私の妻(牛山朋子さん)が僕の子を妊娠したことが分かり、『うまれる』の公開と同時に娘が生まれて、今は映画と同じく、5歳になりました。

胎内記憶をモチーフにした映画を作りたい

大葉ナナコさん(以下、敬称略) 私はこの作品がまだ企画段階だったときに出合っているので、この作品とのお付き合いはもう7年にもなります。5人の子どもを育ててきた私も昨年、おばあちゃんになりました。映画『うまれる』は最初、豪田監督と池川先生の出会いから、胎内記憶をモチーフにした映画を作りたいということで話が始まったそうですね。

豪田 2007年1月に産婦人科医の池川先生が講演をされるということで、先輩から「ボランティアで撮影に行ってくれないか」と頼まれたんです。当時僕は自分の親との関係が良くなかったので、正直、自分の家族を作りたいとも思っていなかった。だから、出産には本当に興味がなくて、嫌々行きました(笑)。そうしたら、池川先生が胎内記憶の話をしてくださったんです。

池川明先生(以下、敬称略) その出会いのすぐ後でしたよね。豪田監督から「胎内記憶をモチーフにした映画を撮りたいんです」とコンタクトがあって。そこで「カメラを向けると、子どもは胎内記憶の話はしないですよ」と言うと、豪田監督が「僕、子どもに好かれるんですよ」って、妙な自信を持っててね(笑)。

 1作目も2作目も、映画の冒頭に胎内記憶についてしゃべる子ども達が出てくる。ずっと私が調査を続けていることを、この映画を見た人達に「普通にあることなんだ」って知っていただけるチャンスがものすごく増えたので、私としても本当にありがたいなあって思っています。