なぜ、中学受験を勧めるのか?
前回記事「中学受験 リーマンショック以後、久々の受験者増加」でも紹介した通り、2016年度の首都圏(群馬県を除く1都5県)の中学受験者数は、公立中高一貫校を含め、5万5200人(※小6児童数は34万3000人)。少子化の影響でかつてのピーク時から比べれば減少傾向にはあるものの、東京23区では依然、中学受験への関心が高まっています。
DUAL読者の中には「私は地方の公立中学・高校を卒業しているので、中学受験には関心がない」という方もいるかもしれませんが、今住んでいる地域の子どもの多くが「中学受験をする」と聞いたら、子どもが「僕も中学受験をしたい」と言い出したら、どうしますか?
中学受験を「する・しない」は、最終的には各家庭で判断することです。しかし、今もなお、一定数の家庭が中学受験をするのには、理由があります。
「それは、中学受験にはいくつかのメリットがあるからです」
西村則康先生はそのメリットをこう話します。
「まず、分かりやすいメリットとしては、いわゆる『いい大学』へ入るためには、中学と高校を3年ずつに分けるより、中高一貫校の学校で学んだほうが、カリキュラム的に有利であることが挙げられます」
「多くの中高一貫校では、中2までに中3の学習を終わらせるので、大学入試に必要とされる高校の教育内容を、4年かけて学習できます。また、学校によっては、高校の教育内容を3年間学習した後、残りの1年を大学受験のだけための勉強に充てることができます」
でも、中学受験の本当のメリットは、そこではないとも西村先生は言います。
「難関校の入試問題を見ていただくと分かりますが、中学受験の入試問題では、単に知識を問うだけではなく、考えさせる問題が多く出題されます。入試の内容は、小学校で習う範囲のものと限られていますが、答えがすぐに出るようなものはありません。『この条件から何が分かるのだろうか?』『この答えを出すには、何が分かればいいのか?』といった考え方が必要になります。私はこれを“思考の型”と呼んでいますが、中学受験勉強をする3年間でそれをじっくり身に付けていくことができるのです。この“思考の型”は中学受験にとどまらず、一生の力となるもので、それを早い段階から身に付けられるというメリットが大きいのです」
「また、中学受験を通して、子ども達は目標に向かって頑張るという経験をします。そして、頑張ったことで、良い結果が出れば『自分は頑張ればできる子なんだ』というセルフイメージを持つことができます。こうして『頑張ってできた』という経験を繰り返すことで、自己肯定感を高めることができ、『どんな困難があっても、自分なら乗り越えられる』と思える子になります。この自己肯定感は、その後の人生にもおいても大きな財産となります」
「良くない結果であっても、中学受験に向けた学習の過程で学んだ“思考の型”は間違いなくその子の財産になります。しかも、良くない結果であったからこそ学べるものがたくさんあります。悔しさや悲しみを乗り越えたあとは、“自分の限界を知りつつも、自分に誇りを持ちながら頑張れる子”に成長しています」
これらの理由で「できることなら私は中学受験はしたほうがいい」と西村先生は勧めます。
しかし、中学受験は子どもの意志だけではできません。そのため親の伴走が必要になりますが、時にそのやり方を間違えて、受験をつらいものにしてしまうことがあると西村先生は指摘します。そうしないために、親の側が知っておいたほうがいいことがあるそうです。次ページからその詳細について小川大介先生に説明してもらいます。