さらにもうひとつ、ママバイアスを外して肩の力が抜けた瞬間がありました。

 産後、新生児のお世話をしながら家事をするのにアップアップだったとき、なかなか生活のリズムを作ることができませんでした。「私、こんなにできない人間だったっけ?」と自己嫌悪に陥っていました。子どもに合わせて動かなければいけなくなった途端、要領が分からなくなってしまったのです。

 洗濯機が止まったけど抱っこで寝てるからすぐに干せない…。買い物行こうとしたらぐずり始めた…。泣かれて料理が中断…! 思うように家事が進まず、頭の中は常にパニック状態。

 社会人を長くやっていると仕事を要領よくこなすことを覚えるし、妙な自信もついてくる。無意識のうちに、できないことが許せなくなっていたところもあると思います。改めて、母とはいろんなことを同時進行で素早くこなす能力が求められるものなんだなと、身に染みました。

ママに問われる同時進行能力も得意、不得意あって当然


生後6カ月までに2回動物園に連れていくと免疫力が高まるとの話を聞き、疑いつつも久々に動物が見たくなったので行ってきました。至近距離のホッキョクグマに大興奮! 残念ながらわが子は終始爆睡してました…

 そんなときに記憶の底からよみがえってきたのが、高校時代に地元のファミレスでアルバイトをしていたときのエピソードです。

 そのお店では、フロアをAホール・Bホール・Cホールと3エリアに分け、各ホールにリーダーがいる形で回していました。私はいつもそのうちの1つのホールを任されて、接客をしていました。笑顔でハキハキとした接客態度はお客様からも好評で、店長から信頼される存在となりました。

 実績を買われた私は、厨房から上がってきた料理を各ホールに振り分ける役割の「ホール長」に任命されました。高校生バイトとしては異例の大抜擢です。大喜びで引き受け、意気揚々と厨房前のカウンターに立ちます。

 これがまったくできません。

 次々と入る注文に、どんどん出来上がってくる料理たち。ドリンクの準備に気を取られているうち、注文の振り分け先を忘れてしまう…。私の頭は完全にフリーズ。気づいたときには、カウンターに行き場の分からない皿が大渋滞を起こしていました。

 怒りで顔を赤くした店長から、ホール長のクビを告げられました。

 授乳中に、よみがえった苦い思い出。同時に、今の自分のパニック状態も仕方ないと、ふに落ちました。

 ママは家事も子育てもテキパキできなきゃいけない!と思い込んでいたけれど、私はママになったばかりのド新人です。1日目のホール長と同じで、パニックにならないはずがありません。

 あのころの不器用で要領の悪い私が教えてくれたんです。「あんた本来こういう感じだから、焦って最初からうまくやろうとするなよ」って。救われた気持ちになりました。

 これからも子どもが成長するにつれて、ママとして自信をなくす場面にたくさんぶち当たるはず。そんなときは一度立ち止まって、「ママ」というブラックホールから抜け出してみようと思っています。