でもね、その日子どもを寝かしつけながら考えていて、気がついたんです。ちょっと待てよ私、と。

 「子どもを産む前だってろくにネイルもやってなかったし、おしゃれカフェだってめったに行ってなかったじゃん!」

 そう。そもそもの話、ママになったからって自分が一新されるわけではないんですよね。

 きっと、あの雑誌に載っているようなキラキラママさんって、独身時代からおしゃれが大好きで、ネイルもメイクもきちんとしていて、おしゃれカフェでパンケーキやかわいいスイーツを食べながら女子会するような、素敵女子だったに違いない。そんな女の子たちがママになっても「かわいい」を失わず、キラキラしていこうじゃないか! 的なコンセプトで、ああいった雑誌は作られていると思うのです。

‟ママ”という共通点だけではくくれない

 一方の私は、仕事以外はメイクも適当で、独身時代は女子をこじらせた飲み仲間たちと「女子力って何ですかね?」と、ストレートのウイスキーを片手にくだを巻いていたような女。

 どうして「ママ」という共通点のみで、彼女たちと同じだと考えてしまったのでしょうか。

 ママ業は、誰かと比べて落ち込む必要なんて全くない。頭では分かっていたはずなのに、無意識のうちにママをひとくくりにして、自分も勝手にその中に入って苦しんでしまう。改めて「ママ」とは、ブラックホール並みの重力がある言葉だなぁ…と実感した次第です。

 そう気づいてから、「自分がそもそもどういう人間か思い出してみる」ことを心がけるようになりました。息が詰まったときは、意識的に「ママ」というバイアスを外してみるのです。

 例えば、ヘアスタイル。産後3カ月のとき、ロングを目指して伸ばそうと決めていた髪をバッサリ切りました。

 切るのをためらっていたのは、「子育てするには短いほうが楽」という理由で髪を切ってしまったらどんどん自分の身なりに気を配らなくなり、女の坂道をゴロゴロと転がり落ちてしまう気がしたから。ちょっとした意地を張っていたのです。

 産んでからの数カ月は、ロングヘアーの素敵ママを夢見てがんばりました。たれ下がった前髪が授乳の邪魔になっても、お風呂上がりになかなか終わらないドライヤーがストレスでも。それが子どもが100日を越えたころ、ママバイアスを外してみて気づいたのです。

 「私って、昔から髪伸ばすこと挫折してたじゃん」

 伸ばせないのはいつものことで、これは子育てうんぬんの話じゃない。速攻で美容院の予約を入れ、バッサリと髪を切ったのでした。あー、スッキリした。