田舎暮らしで過剰な“こだわり”から一歩引いた人生観を得られた
生物好きだった長男はすでに中学3年生となり、今では自転車やサーフィンなどのアクティビティーを通じて房総半島の自然を満喫しているといいます。
「私達が南房総の家を購入したのは長男がまだ6歳のときでしたが、やはり幼いころから対照的な二つの環境に身を置いていると想像力が広がり、相対的に物事を捉えられるようになるというのはあるかもしれません。ひとつのコミュニティーだけで暮らしていると、意識の高い・低いで済ませてしまいがちな個々の価値観の違いを、双方の立場になって考えることができるようになったり。あと少々のハプニングでは動じないたくましさみたいなのも身に付きますね。
実際、田舎での暮らしって思った通りにならないことの連続なんですよ。まあ自然を相手にしているわけですから当然ですけれども。例えば、いくらお皿をちゃんと洗っていてもたまに味噌汁に虫が浮いてたりする。それに対して内心『うわっ』と思いつつも鷹揚(おうよう)に笑い飛ばせるぐらいになると、田舎の暮らしがより楽しめるのかもしれませんね」
東京と南房総の二地域居住が育児にもたらしてくれた恩恵について、馬場さんはさらに続けた。
「特に育児に関わることって教育にしろ食べ物にしろ『こうしなければ』みたいな情報が溢れていますよね。田舎暮らしによってある意味過剰な“こだわり”から一歩引いた人生観を得ることができたのは、非常に有意義なことだったと思っています。細かく見ていけば問題だらけの人生も、幸福に感じられるようになるというか。著書ではそれを『でっかく生きる』なんて表現しましたけど(笑)」
(文・プロフィール写真/佐藤 旅宇)