田舎暮らしで過剰な“こだわり”から一歩引いた人生観を得られた

ご長男は中学生になってから自転車やサーフィンなどで房総半島の自然を満喫
ご長男は中学生になってから自転車やサーフィンなどで房総半島の自然を満喫

 生物好きだった長男はすでに中学3年生となり、今では自転車やサーフィンなどのアクティビティーを通じて房総半島の自然を満喫しているといいます。

 「私達が南房総の家を購入したのは長男がまだ6歳のときでしたが、やはり幼いころから対照的な二つの環境に身を置いていると想像力が広がり、相対的に物事を捉えられるようになるというのはあるかもしれません。ひとつのコミュニティーだけで暮らしていると、意識の高い・低いで済ませてしまいがちな個々の価値観の違いを、双方の立場になって考えることができるようになったり。あと少々のハプニングでは動じないたくましさみたいなのも身に付きますね。
 実際、田舎での暮らしって思った通りにならないことの連続なんですよ。まあ自然を相手にしているわけですから当然ですけれども。例えば、いくらお皿をちゃんと洗っていてもたまに味噌汁に虫が浮いてたりする。それに対して内心『うわっ』と思いつつも鷹揚(おうよう)に笑い飛ばせるぐらいになると、田舎の暮らしがより楽しめるのかもしれませんね」

 東京と南房総の二地域居住が育児にもたらしてくれた恩恵について、馬場さんはさらに続けた。

 「特に育児に関わることって教育にしろ食べ物にしろ『こうしなければ』みたいな情報が溢れていますよね。田舎暮らしによってある意味過剰な“こだわり”から一歩引いた人生観を得ることができたのは、非常に有意義なことだったと思っています。細かく見ていけば問題だらけの人生も、幸福に感じられるようになるというか。著書ではそれを『でっかく生きる』なんて表現しましたけど(笑)」

馬場さんは現在、南房総リパブリックで里山学校などイベントを行い、南房総の魅力を伝えることにも力を入れています
馬場さんは現在、南房総リパブリックで里山学校などイベントを行い、南房総の魅力を伝えることにも力を入れています

馬場家の「脱都会・田舎育児」

■ 週末だけ田舎育児のきっかけ:息子の生き物好き
■ 初期費用(コスト):物件価格は郊外の50~40平米のワンルームマンション購入と同じくらい
■ 楽しみ方:近くの海や川に行く、部屋でゆっくりするなど移り変わる四季を感じながら普通に過ごす。ごくシンプルな行為の繰り返し
■ 主導権は妻?夫?:妻
■ この暮らしをするならここに気を付ける!というポイント
 ・味噌汁に虫が浮いても鷹揚(おうよう)に笑い飛ばすくらいの心構えを持つ
 ・立てた計画に厳密にならず、変化を怖れず、柔軟な気持ちで暮らす

馬場 未織

馬場未織(ばば・みおり)

1973年生まれ。日本女子大学大学院修了後、建築設計事務所に勤務。退社後ライターに転向し、建築雑誌やファッション誌などで執筆。私生活では南房総にて週末里山暮らしを実践し、2011年に建築家、農家、造園家らとともに里山活用の現・NPO法人南房総リパブリックを設立。目下、親子向けの自然体験教室「里山学校」(南房総市)、三芳つくるハウス(南房総市)を運営中。自身の二地域居住生活についてまとめた著書『週末は田舎暮らし~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記』(ダイヤモンド社刊)は、2014年の発売以降、これまでに中国語版、韓国語版、台湾語版も出版されている。

(文・プロフィール写真/佐藤 旅宇)