田舎の地域社会に無理になじもうとせずに徐々に認知されていった
馬場さんがセカンドハウスで過ごすのは1カ月のうちの2、3週末。金曜の夜に東京を出発し、現地で2泊してまた東京に帰ってくるというサイクルです。もちろん、長男(中学3年生)、長女(小学5年生)、そして二地域居住を始めてから生まれた次女(小学1年生)の3人きょうだいも一緒。ご主人は仕事が忙しいため、来られるときだけ合流します。
「夜に出発しているということもあるんですけど、交通にストレスが少ないところも房総半島の美点です。アクアラインは比較的空いていることが多いですし、時間も都心から90分程度でアクセスできますから。あと南房総は観光ガイドに大きく掲載されるような名所ではなく日常の風景の中に美しさがあるんですよね。
だから移り変わる四季を感じながら普通に過ごすだけで満たされた気持ちになる。基本的に向こうでの過ごし方って、農作業や草刈りをしたり、部屋でのんびりしたりと、ごくシンプルな行為の繰り返しなんですけど、何年経っても飽きることがないですね。
逆に東京での暮らしは何かと『変化』を求めては疲弊しがちだと思うんです。仕事や暮らしを絶え間なく発展させなければいけないような強迫観念にとらわれるというか」
ところで、田舎に家を購入したいと検討する人の中で心配になるのは、地域社会になじめるか、自分達の居場所を確保できるのかということではないでしょうか? 馬場さんはその点について、次のように話してくれました。
「あくまで私の場合ですが、地元の農家さんに、あまり積極的に自分をプレゼンテーションするよりも、向こうが自然と興味をもってくれるまで待っていたほうがいいとアドバイスしていただいたんです。だから、時間をかけて地域社会に溶け込むようにしました。最初の2~3年間は農作業を教えてくれる方とだけ、点と点でコミュニケーションをとっていましたが、徐々に集落の人たちみんなに自分の存在が認知され、なじんでいく、そんな感じで今まできています」