金利と不動産価格、今後の見通し

 今後の見通しについては、短期的にはマイナス金利がもう少し拡大しそうな状況ですから、住宅ローン金利も今と同じか少し低いくらいの状況が数カ月は続くと思われます。マイナス金利は金融政策の一環で、1カ月や2カ月でいきなりやめることは考えにくいからです(それ以上先は政策も相場ももちろん分かりません)。

 今後の不動産価格は、低金利による不動産投資の加速と購買刺激効果、相続税対策での不動産需要などにより、短期的には現在と同程度か、上昇が見込まれるかもしれません。

 ただ、現在の不動産価格はハッキリ言って上がり過ぎです。バブル期には数倍に上がりましたから、今がバブルというつもりはありませんが、23区のマンションが平均で6000万円超というのは、いったい誰が買っているんだろう? と不思議に思ってしまう水準です。

 過去の日経DUALの連載ではそういった価格水準のマンション購入相談を多数取り上げていますが、6000万円の物件を買えるのは最低でも世帯年収が1000万円超ですから、これは全体から見れば一部です。ちょっと景気が悪くなって買い手が減少してしまえば、価格は急落する可能性もゼロではありません。

アパートの空き家は増え、契約率は低下

 不動産コンサルタントの長嶋修さんは日経スタイルの記事において、相続税対策で建てられるアパートの増加により、首都圏のアパート空室率が直近で上昇傾向にあると説明しています。アパートとマンションでは単純な比較はできませんが、アパートの供給が増えれば賃貸が安いからと購入をやめる人は増えるかもしれません。

 長嶋さんは、2016年1月のマンション契約率(売りに出されたマンションが契約に至った割合)が、好不調の境目といわれる70%を大きく下回る58.6%であることも挙げながら、現場ではさほどマイナス金利だから盛り上がっているという動きは確認できない、とも説明しています。

【参考】
マイナス金利でも 盛り上がらない新築住宅市場 |マネー研究所|NIKKEI STYLE http://style.nikkei.com/article/DGXMZO98108940X00C16A3000000

 さて、このように考えていくと、結局はケースバイケースでしかない、ということになります。各家庭の状況に応じて、買いたいのであれば買える範囲で買いましょう、ということです。

 ケースバイケースと言っちゃあオシマイでしょ、と突っ込みを受けそうですが、住宅購入にブームは関係ありません。目安はないの? と判断材料を欲しがる方は多いと思いますが、そのような考え方は危険です。自分はファイナンシャルプランナーとして、基礎知識を除けば住宅購入は個別の事情で判断するしかないため、普段の連載で書いているような個別相談に力を入れています、という回答になってしまいます。

質問③ 金利タイプは変動、固定どちらがいいのでしょう?

 金利の選択については、様々な考え方がありますが、私自身のアドバイスはフラット35のような全期間固定が無難、ということはずっと変わりません。

 マイナス金利導入により、現在0.5%程度の変動金利はさらに下落する可能性はあります。ゼロに近づく、場合によってはマイナスもあるのでは?と思うほどの異次元ぶりです。

 ただ、全期間固定金利の代表ともいえるフラット35が1.250%と過去最低を更新したように、これだけの低金利を定年間近に完済するまで享受できるとなれば、従来の常識では考えられないほどの好条件です。ここにフラット35Sという仕組みで5年もしくは10年の0.3%の金利優遇も考えれば、借り入れ当初はなんと0.95%です。

 フラット20といって、借入期間を20年以下に抑えると2016年3月の最低金利は1.020%と、さらに好条件になります。現在変動金利や10年固定は0.5%程度で貸し出す銀行もありますが、全期間固定がこれだけお得になった状況で、さらに金利変動リスクを取って変動や短期固定の金利を選ぶ理由は、そこまで大きくはないと思われます。