再出発はいつでも可能。企業や社会にお母さん達のスキルを評価してほしい

―― 今、働きたいと思いながらも、出産を機に退社して専業主婦になっているお母さん達も少なくないと思います。かつて38歳で看護の道を目指した弥生さんから、そんなお母さん達に伝えたいことはありますか?

木村 まず、「もうどうせ……」という言葉で、諦めないでほしい。謙遜もあるのかもしれないけれど、「もう私は30歳だからダメだ」とか「記憶力がついていかないからダメだ」とか言う方もいますが、そういうことではないのです。意思あるところに必ず道はあって、頑張ろうとしていたら絶対に誰かが声を掛けてくれます。

 ただ、お母さん達の意思ももちろん大切ですが、その一方で、企業や社会自体が、お母さん達が持っているスキル、育児をした経験や、周囲と適切な人間関係を築くという人間的なスキルを評価すること。再就職を応援すること。そんな社会にしていかないといけないし、お母さん達のスキルを認める企業が伸びていくのだと思います。

―― 今もこれからも日本は大変な高齢社会で、女性の力が必要になってくると思うのですが、やはり育児を終えた母親達の力も必要だと思われますか?

木村 まさに、労働生産人口が減っていく中で、女性と高齢者というのは最大の潜在力です。日本には、大卒の女性がたくさんいるのに、どこかでキャリアを分断されて働いていないのですから。

 103万円、130万円の壁というのも、今の時代にそぐわないですよね。昔は、専業主婦がほとんどで共働きは少なかったわけですが、平成8年の時点でクロスしていて、働いている妻のほうが多いのですから。

 看護の世界でもそうなんです。とても優秀なナースなのに、年末になると103万円を超えてしまうから、今年はもう働けませんと言うパターン。それは、本人にとってもキャリアの損失になるし、病院側にとっても、良いケアを受けられるはずだった患者側にとっても大きな損失になるんです。今、この103万円の壁についても、自民党でも見直そうという話がやっと出てきています。私自身もそのワーキングチームの委員に入っているので、制度が現状とそぐわぬ問題については、実情に近づけるために改正していかなければならないと思っています。

 これからは“人生90年時代”ですが、健康寿命と平均寿命の間に10年くらいの差があります。仕事という生きがいがあるということは、その人の健康にとっても大切だし、経済的に自立するのも重要なことだと思っています。今、高齢者の生活保護が増えていて、高齢女性の一人暮らしの半分以上が生活保護を受給しているという状況です。やはり女性は低賃金のままで、キャリアが分断されてしまい、高齢になってからの再就職もなかなか難しい。私はそんな社会を変えたいのです。元気な女性の高齢者が増えることが、膨張する日本の社会保障費を抑制することにもつながると思うのです。

―― 国会議員は、ずっと働き続けていた男性が多いですよね。委員会などの場で発言するときなどは、専業主婦も兼業主婦も経験しているということを意識して話されているのでしょうか?

木村 意識しています。例えば、労働者派遣法の改正について話し合っているときにも、野党の皆さんが口にするのは「派遣は良くない。派遣はかわいそう」というレッテル貼りばかりなのです。私は、派遣社員として働いたことのある数少ない国会議員の一人ですから、「派遣という働き方が良くないとは、一概には言えない」と自分の経験をお話ししました。

 子育てに比重を置きながら働きたい場合、残業がなく、決まった時間に帰ることができる派遣という働き方は私には合っていた。そこで、看護大学に進学する学費をためて、夢をかなえることができた。そういう一つの見方を示すことも大切だと思ったので、そのような発言をしました。

 永田町も霞ヶ関も、やはり男性が多い中で、母親の視点というものが置き去りにされていると感じることもあるんです。これからも、自分の立場を忘れずに、衆議院議員としての仕事を全うしていきたいと思います。

* 次のページは、木村さんのお助けアイテムと、藤村さんによる取材後記です。