「私には音楽がある」と、本当の意味で、やっと思えたのかも……

 「私には音楽がある」と、本当の意味で、やっと思えたのかもしれません……。

 それは仕事を再開したからかもしれないな。

 私には、友達と会っていない空白の期間があって、そこには皆の知らない私がいます。その間、私は自分の人生を必死で生きてきました。それは自信を持って言える。でも歌をお休みしている間は、本当の意味でそうは言えなかったのかもしれない。「私はこんな人生だよ!」って、胸を張って言えなかったから、同窓会に行けなかったのかも。

 周りの方が見たら、あなたはプリプリとして活動して、大好きな音楽でたくさんの方に応援していただいて、今も歌ってもらえるような曲もつくれて、どこが自信ないんだっ!! て思うかもしれない。

 でも私は、過去の栄光にはあまり興味がないんです。

 昔のことを言われて、「香、すごかったよねー」って言われても……。そんな思い出話で終わるくらいなら、同窓会に行きたくなかった。

 私は過去に生きてるわけじゃない。毎朝、「起きなさーい!!」って息子に怒鳴りながらも、子育てに追われながらも、生きているのは常に今。それは、皆さんそうですよね。同窓会って、今の自分をちゃんと生きていないと、行けないものなんでしょうね。

 私は仕事をしていなかった時期も、音楽とは付かず離れずの生活をしていました。大好きなことから、完全に離れたくはなかったし、音楽は体の一部みたいなものだから、いつも音楽は私の生活の中にありました。でも、それが“日常”になっていたことで、「私には音楽がある」ってことを、ちょっと忘れていたのかも。

 それを思い出させてくれたのが、仕事の再開でした。

 私の場合は、そのきっかけが東日本大震災復興支援のための音楽活動だったということが大きかったように思います。こんな私でも、歌うことで喜んでくれる人たちがいて、ほんのちょっとだけ、誰かの元気の素になれたかな、なれたらいいなって思いながら活動する中で、「そうだ、私には音楽があった」って改めて実感できたんです。誰がなんと言おうと、おばあちゃんになっても、歌い続けたいという思いを新たに持てた気がします。

 仕事をしている、していないに関しては、皆さん、いろんな形があると思いますが、大好きなことを思い出せたという意味では、私は仕事をまた始めてよかったなと思っています。

 ちなみに同窓会後、仕事をやめてずっと専業主婦をやっていた友達から連絡が来ました。「久々に香に会って、私もまた働こうと思って、少しずつ仕事に出ることにした」って。私も「うん、やってみたら、ブランクあっても意外とできたよ」なんて話して。

 友達が一歩踏み出すきっかけになれたこともまた、ちょっとうれしいことでした。

 そんなわけで、子どもたちには「友達は大事にしなよー」って、折に触れて言う日々です。

(撮影/稲垣純也)