子どもが犯罪被害に遭わないために親が知っておくべき知識について、地域の安全や犯罪予防を研究する小宮信夫立正大学教授が、実際の事件や事故を基に検証しながら解説する連載。前回は、30年前に起きた宮崎事件から、学ぶべき防犯ポイントについて説明しました。今回取り上げる事件は、2005年12月に起きた栃木小1女児殺害事件。つい先日、容疑者の初公判が開かれ、話題になりましたね。この事件にも「景色から読み取るべきポイントがある」と小宮教授は言います。そのポイントとは、なんでしょうか。

──今回分析するのは、栃木小1女児殺害事件です。2005年12月に起きた事件ですから、今からちょうど10年前ですね。確か、誘拐された場所が栃木県今市市で、遺体が見つかったのが茨城県常陸大宮市だったんですよね。着目すべきは、誘拐現場でしょうか、遺体遺棄現場でしょうか。

 これまで同様、犯罪が始まった場所、つまり誘拐現場です。この連載では、ずっと「犯罪のスタート地点に共通点がある」という視点から事件を分析しています。なぜなら、その場所にさえ行かなければ、犯罪に巻き込まれずに済むのですから。どういった場所で犯罪が始まったのか、そのことに注目していきましょう。

──この事件が始まった場所には、どんな特徴があったのでしょうか。

 その前に、事件当日の被害者である少女の動きを辿ってみましょう。学校からの帰宅途中、事件が起きました。いつもは少女の祖母が迎えに行っていたのですが、この日はたまたま事情があって行けませんでした。

 少女は三叉路で友達と別れ、一人になりました。三叉路から家に帰る道は2つあり、ひとつは細くて遠回りの道。もうひとつは、住宅開発途中で放置され、不法投棄されている空き地を通る近道。女児はふだんは近道を祖母と一緒に歩いていたようです。