不法投棄がある場所は「見えにくい」?

 さて、ここまでの話を聞いて、どこが犯罪現場の特徴を見分けるポイントになるのか、わかりましたか?

──ええと…犯罪が起きる2つのポイントを見つければいいんですよね。その2つのポイントとは、「入りやすい場所」「見えにくい場所」でした。今のお話の中には、特にそのような特徴を見分けるポイントはなかったような気がしますが…。

 そうでしょうか? では、ヒントを出します。これまで私は連載の中で色々お話ししてきましたが、その中で、「壁が落書きされている場所」や「放置自転車がある場所」は、どういう場所だと話していましたか?

──壁の落書きが残っている場所は、誰からも気にされていない場所でした。誰かが気にしていれば、壁の落書きは消されてきれいになっているはずですからね。放置自転車も、誰か気づく人がいれば、その場所から移動されているはず。ということは…あっ! 今回の現場の注目ポイントは、不法投棄でしょうか。

 はい、正解。以前、この場所に行ってみたことがあるのですが、そこには驚くほどの不法投棄がありました。これほどの投棄物が残されているということは、誰もその場所に関心を示さなかった、つまり「(心理的に)見えにくい場所」だったということになります。

不法投棄は無関心のサイン、つまり「心理的に見えにくい場所」の証拠
不法投棄は無関心のサイン、つまり「心理的に見えにくい場所」の証拠

 さらに悪いことに、この道にはトンネルがありました。トンネルは、「物理的に見えにくい場所」です。トンネルの中に入ってしまったら、その中で何か起きたとしても、外からは見えませんからね。しかも、このトンネルには落書きがありました。つまり、ここも「心理的に見えにくい場所」だったのです。

トンネルは、物理的に見えにくい場所。一人で入るのは危険
トンネルは、物理的に見えにくい場所。一人で入るのは危険

 ということで、この帰宅ルートは「心理的に見えにくい場所」だらけだったんです。だから、その場所で犯罪が起きてしまった。