意見を言うのも、聞くのも大事

 休憩後、講師役の劇団員たちがダンスを披露する。村の小人たちがパンを焼く、という設定の迫力ある踊りだ。動きが早く、複雑な振りをこなす彼らにさすがプロ、と唸っていると「これをみんなで踊りましょう」。

 「無理じゃない?」と半信半疑の空気が流れるが、少しずつ踊ってみると、実は休憩前にみんなでやったおじいちゃんポーズや「足じゃんけん」に「右回り」「左回り」などが加わっただけで、個々の動きはシンプルそのもの。それが滑らかに繋がることで美しく、複雑な振りに見えていたのだ。そうはいうものの、運動会のお遊戯よりずっと複雑で長いナンバーとあって、5歳の娘は追いつこうと必死の表情。

 だいたいの振りを体に入れたところで2チームに分かれ、いよいよミニ・ミュージカルに取り掛かる。みなで設定と役柄を相談し、さきほどの「パン焼き」ダンスから好きな乗り物に積み込むまでを演じるのだ。

 娘が入ったチームで劇団員の金村瞳さんが「場所はどこで、みんなは誰?」と呼びかけると、小さい子たちが「南の島!」「小人!」「乗り物は船!」と矢継ぎ早に返す。気おされる大人たちに、金村さんは「どうですか? ご意見言っていいですよ」とフォローを欠かさない。

 そんな様子をみているうちに、意見を言うことも大事だし、他の人たちの意見を聞くことも大事、と子どもたちにもやんわり伝わり、以降は何か言いたげな人がいないか、見回す余裕が出てくる。台詞を口だてで教わり、パンを船に積み込む動きも覚え、さっそく通し稽古。ストーリー性が加わったことで、みんなの動きもより生き生きとしてきた。

「それでは本番にしましょう」

 会場には外で待っていた親たちも呼び込まれ、まずは「南の島」班から発表が始まった。