成功の鍵は学びと楽しさのバランス。エンターテイメント企業としての決断

 「実はテーマが決まってからのほうが大変でした。モノづくりのテーマパークといっても、各企業様に具体的なイメージを伝えるのは難しく、コンセプトや思いを粘り強く説明して協力をとりつけました(曽原氏)」

 協力が決まった後も、一歩先へ進めるたびに、よみうりランドと協力企業の両方に承認を得ることが必要というから、苦労が多いことは容易に想像できるところです。

 「確かに難しい部分もあったし時間も要しました。でも違った視点、価値観の意見を集約して作り上げたからこそ、クオリティーの高い満足のいく施設に仕上がったと思います(曽原氏)」。

 プロジェクトチームは、実際のモノづくりの開発現場や工場にも多く訪れたといいます。

 「完成品を見ただけでは分からないモノづくりへのこだわり、厳しさ、そして安心・安全に対する真摯な取り組みなど、企業精神に触れる機会が多くありました。株式会社ワールド(FASHION factory・パートナー企業)の工場に訪れたときには、製品への針の混入を防ぐための安全対策に驚きました。担当者による針の管理方法、万一針の紛失が発覚した際には工場全体をストップし見つかるまで稼働しないという方針。そのうえで、出来上がった製品は、すべて検針器にかけ、何重にもチェックをするという徹底ぶりに頭が下がる思いでした(曽原氏)」

 制約もあり、すべてをグッジョバ!!に反映するのはかなわなかったといいますが、モノづくりに対する現場の魂をしっかりと受け止め、生かした施設だということが話から伝わってきます。

 またグッジョバ!!の計画に際して「子どもと学び」をコンセプトにした全国の施設を視察。その経験から「成功の鍵は、学びと楽しさのバランスにある」と確信したと曽原氏。

 「学びの押しつけでは面白くなく、子ども達は興味を持たない。かといって、楽しさを追求しすぎると従来の遊園地と変わらなくなってしまう。双方のバランスは重要で非常に悩みました(曽原氏)」

 出した答えは「よみうりランドはエンターテインメント企業。目指すべきは、楽しさを入り口に、いつの間にか学んでいた、あるいは気づきや疑問を持ち、学びのきっかけになっていたということ(曽原氏)」。新しい体験や、何かを達成したときの子どもの喜びを自信へとつなげるために、現場のスタッフも積極的に子ども達に声をかけ褒めてサポートをするといいます。

FASHION factoryワークショップでは、くるみボタンづくりや織物づくりなどのプログラムを実施 ※1
FASHION factoryワークショップでは、くるみボタンづくりや織物づくりなどのプログラムを実施 ※1

アトラクション「スピンランウェイ」の乗り場へのアプローチの意匠は、アパレルデザイナー6名が制作。服づくりの現場で利用するイメージマップなどが並ぶ ※1
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