イクメンビジネスで法人向けの展開も

 ライバルというか、イクメン向けのビジネスで成功してる人はいますか?

 成功と言えるか分かりませんけど、親子向けの料理教室をやってる人はいますね。その方も週末起業です。食品メーカーの方で食に関わることがやっぱり大好きみたいで。僕も参加しましたけど、かなり楽しかったです。小規模ですし、価格は材料費と会場の場所代だけという感じで格安だったのもあると思いますけど、ほぼ満席でしたね。

 そういうのもよっぽど規模が大きいとか効率良く展開しないと、参加費だけで利益を出すのは難しいんですよね。通販とかウェブサービスと違って対面で提供するサービスはとにかく手間もコストもかかりますから。
 旦那様は編集者になる前は広告営業もやられてたんですよね。タイアップのイベントとかはやりませんでしたか?

 読者向けのイベントは何度もやりましたよ。クライアントによっては紙面とかネットだけじゃなくてリアルのイベントにも力を入れるところはありましたから、いろんな会社に協賛していただいたり。

 そういうイベントが成り立つのは雑誌を読んでいる読者層が明確で、そこに向けて宣伝をしたい企業がお金を出すからですよね。それってイクメン向けという切り口でも成り立ちませんか?

 成り立つかもしれないです。地元のパパ向けにイベントを開催して、そこにスポンサーからお金を出してもらう、ということですよね。

 (旦那様が参加したイクメン向けイベントのチラシを手に)このイベントは公的なものですけど、これは主催が旦那様で、スポンサーとしてイクメンに商品を売りたい企業の広告がここに入っていてもいいわけですよね。サンプルを配布したり商品を使ったりするイベントでもありでしょうし。もし自分が同じビジネスをやれって言われたら絶対に無理です。経験がないので、企業からお金を引っ張ってくるなんてやり方が分からないですから。でも旦那様は広告営業の経験があって自身もイクメンなわけですから、できそうじゃありませんか?

 企業からお金をもらうことは考えてなかったですけど、やってみたいですね。

 このアイデアがうまくいくかは分かりませんけど、法人向けのビジネスは可能なら考えてください。個人から得られる売り上げと比べてケタが一つも二つも違いますから。あとは取り引きを開始するまでは難しいですけど、一度取り引きが始まれば個人より安定してるんですね。気まぐれで買ったり買わなかったりの判断をする個人と違って、法人は取引を開始するのも停止するのも必ず理由が必要ですから。

それでも厳しい独立への道

 色々とアドバイスはしましたけど、やはり最初のうちは相当厳しいことは間違いないと思います。3年後にはお子様が小学生になって保育園よりも迎えの時間が早い学童保育になり、その時点で奥様は時短勤務終了、旦那様は昇進でお子様との時間が取れなくなるので確実に詰んでしまう、という話を(前回に)うかがいました。でも、現実的に考えてそれまでに今と同等以上の収入を独立して得られる可能性はかなり低いと思います。ハッキリ言ってしまうと無理です。旦那様が今まで独立に踏み切らなかったのも、収入が得られる確信が持てなかったからだと思いますので。

 そうなんですよね……。

 自分から見ても、コミュニティービジネスで独立は相当無謀に見えます。なので、いったん二つに話を分けてみてはどうですか? 要するに「コミュニティービジネス」と「独立」です。今のままでは昇進を受け入れざるを得ず、子どもとの時間がほとんど取れない、一度昇進を断ってるのでもう断れない、ということでしたよね。

 ええ。

 こういう選択を旦那様がしたいかどうかは分かりませんが、いったん独立することを優先して、仕事は今の職場から編集やライティングの仕事を請け負う、という形で収入を確保することはできませんか? 職場を辞めた人がフリーのライターとか編集者という形で古巣と関わってることはあると思うんですが。

 ないことはないですね……というか普通にあります。

 自分の知っているライターとか編集者でもそういう方は何人もいます。管理職に抜擢されるぐらいですから、旦那様が会社から信頼されていることは間違いないと思います。そうであれば、いったんフリーの編集者とかライターから始めて、そこから徐々にコミュニティービジネスにシフトしていく、というやり方もあると思ったんです。正社員+副業の段階から始めて、独立していきなり副業を本業にするのではなく、フリーの編集者+副業という働き方を間にはさんで、副業であるコミュニティービジネスを徐々に本業にしていくという感じです。

 言われてみればそのほうが手堅いですよね。……なんで言われるまで気づかなかったんだろう。フリーの編集者をやるつもりは全くなかったんですけど、そういう段階を踏むためにフリーになるなら僕としても十分アリだと思います。

 ラーメン屋で脱サラみたいなやり方が一番危ない、と(前回の記事で)言いましたけど、それって単純に未経験の仕事で食っていくのが大変というだけでなく、そもそも独立して食っていくのが大変ということなので、可能な限り保険をかけるのは全然悪いことじゃないんです。仕事をもらえるあてを作ってから辞める、というのは潔くはないかもしれないですけど、独立とか起業は潔くないといけないなんて決まりはないですから。

 他にも話題は多岐にわたったが、多数のアドバイスをしたうえで経営や起業に役立つ書籍を紹介して相談は終わった。独立にあたって住宅ローンは繰り上げ返済で少しでも減らしておくべきか、という話については「収入が減ったときには手元資金が命綱なので、独立を考えているのであれば繰り上げ返済は絶対にしないように」とアドバイスをした。

 奥様の働き方についても、パート勤務を希望ということだったが、旦那様が独立すれば収入が増えるにせよ減るにせよ不安定になることは間違いなく、お子様の手が離れた後はパート以上の収入を得られる仕事をしたほうがいいことも伝えた。

 現在、起業・独立にあたって必要なコストは劇的に下がった。手続きだけならば税理士や司法書士などに依頼すれば自分でやる必要はない。ネットで調べれば0円で独立も可能だ。しかし独立して稼ぎ続けていくことは極めて困難を伴う。独立をして軌道に乗っている人に相談する機会すらない、結局は危ないからやめておけと周囲に言われて諦めてしまう、というのが実際のところだろう。

 今回の相談では、独立にあたって貴重な話をたくさん聞けたと喜んでもらえたようだが、旦那様は独立する踏ん切りはつくだろうか。そして独立して稼ぎ続けることはできるだろうか。今回の記事が独立を考えている方、そしてすでに独立している方にとって少しでも参考になればと思う。

■相談者募集!
 連載に出ていただけるご夫婦を募集しています。相談は執筆者の中嶋よしふみさんが対応します。料金は不要です。家計、住宅、保険、資産運用などに関するレッスン・相談内容を記事執筆の参考にさせていただきます(記事は個人が特定されないように配慮します)。詳細はご応募ページをご覧ください。 

※過去の連載では住宅購入の相談がほとんどでしたが、現在は住宅以外の相談も募集しています。シェアーズカフェでは個人に関わるお金の相談は住宅以外でも多数お受けしていますので、分野を問わずお申込み下さい。
【例】住宅購入・ローンの借り換え・保険の加入、見直し・資産運用・家計の見直し・株式投資・不動産投資・投資サギ・独立起業(スモールビジネス)など