急増する国内生向け英語入試。「グローバル」に受験生は集まったのか?

 近年、少子化が加速する中、私立中高一貫校にとっても生徒募集の確保は厳しい状況になっています。そんな中、数年前から特徴のある入試として、帰国子女とは別に国内生向けに英語入試を実施する学校が増えています。2014年度は11校が実施し、2015年度では新たに18校、そして2016年度は新たに21校とその数を徐々に増やしているのです。また、一つの学校が複数回、英語入試を実施する場合もあり、英語入試のみで中学受験をすることも可能になってきています(参考:「2015年度の中学入試で起きた見逃せない変化とは?」

 しかし、実際そういった英語入試にどれだけの受験者が集まったか調べてみると、必ずしもすべての学校が人気だったとはいえないようです。人気を集めたのは、山脇96人、三田国際65人、広尾学園54人、公文国際44人、都市大付属25人、大妻中野21人、工学院17人などで、募集はしてみたが数名しか集まらなかった、または応募者0だったところも多く、1都5県の応募者数の合計はせいぜい500人程度だったと推測されます。

 この現状を、安田理さんはこう解説します。

 「応募者が多く集まった学校は、既にある一定の評価がある学校や、帰国生の受け入れを増やしている学校など、『信頼性に裏打ちされた期待感』が前提になっており、英語入試を始めたからといって、すべての学校に生徒が集まったわけではありませんでした

 「当研究所に寄せられた保護者の声の中には、『わが子には自分のように英語で苦労はさせたくない』という思いから、帰国子女やネーティブ教員の多さを学校選びの基準にし、英語教育に優れた学校を探す家庭が増えています」

 「また、世界を見て肌で感じてきた家庭は、国内の大学合格実績などよりも、グローバリゼーションを意識した学校への期待を高めているようです。英語やアクティブラーニングなど、将来子どもに必要となる能力を伸ばしてくれる学校を希望しているのです」

 「これまで中学受験をする家庭は、学校に対して“同じような家庭層”を求めていました。しかし、今は似たような生徒同士で学ぶことよりも、多様性や子どもの視野を広げてくれる環境を求める家庭が増えています」

 こうした背景は、今年度の入試にも表れました。新設クラスでは、大妻中野の「グローバルリーダーズコース」、山脇学園の「クロスカルチャークラス」、開智日本橋の「デュアルランゲージクラス」など、“グローバル”をキーワードにしたクラスに人気が集まったのです。

 つまり英語入試そのものよりも、本気でグローバルな人材を育てたいという学校の意志が感じられるところに、人気が集まったといえます。