子どもを一人の人間として尊重する

──子どもに対して、親は謙虚でいるといった感じでしょうか?

親野 親子といえども、人間同士なんですよ、と私は言いたい。だから親には、わが子を一人の人間としてリスペクトしてほしいのです。「親だから」とか、「子どものためだ」などと、親だから許されるという発想が、そもそも間違いだと思います。

 その発想のままだと、子どもを叱ってばかりになってしまうわけです。上下関係ではなく、フラットな人間関係として、子どもをリスペクトして対応していれば、子どもも同じような対応をするようになるはずです。

 だからこそ、親子というのは、“親友”のような関係でいいと、私は思っています。よく、「友達のような関係の親子ってどうですか?」と聞かれるのですが、私は親友のような関係であればいいと思っています。

──友達力をつけるためには、まずは親子関係をしっかり築いて他者信頼感を持つようしなければならないのは分かりますが、どうしても上の立場でガミガミ言ってしまう親は多いと思います。

親野 親なのだから、わが子に何の遠慮が要るのか、と思ってしまう。しかも、わが子のために行っているのだから、という2つの勘違いがあるわけです。わが子といえども、別の人格です。確かに親を通して生まれてきて、幼児期の今はさんざん親にお世話にはなっているけれども、この宇宙の中で一人の人間として存在しているというのは紛れもない事実なのです。

 たかだか20年とか30年、親のほうが早く生まれただけのことであって、それは、永遠の宇宙の中では、ほんの一瞬の違いでしかありません。ちょっと壮大な話になってしまいましたが(笑)、そう考えると、少しはおおらかに接することができるようになると思います。

 ですから、親子は人間同士として“お付き合い”する感覚でいいと思うんですよね。教育だとか、しつけだとか思ってしまうから、上から目線になってしまって言葉もきつくなるんです。

 わが子といえども、一人の人間として尊重する。それさえできれば、子どもに対して愚かな言葉は発せられなくなるはずです。それができないと、上から目線になってガミガミ言ってしまう。そのうち、親子関係はボロボロになってしまい、友達との人間関係をうまく築くことができなくなってしまうのです。

 親が子どもを一人の人間として尊重すれば、子どもも親に対して全く同じものを返してくれます。そこからまずは、スタートしてほしいですね。

親野 智可等

親野 智可等(おやの・ちから)

教育評論家。1958年生まれ。本名 杉山桂一。公立小学校で23年間教師を務めた経験と知識を、少しでも子育てに役立ててもらいたいと、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発行。具体的ですぐできるアイデアが多いとたちまち評判を呼び、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛される。また、子育て中の親達の圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5年連続第1位に輝いた。読者数は4万5千人を超え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。ブログ「親力講座」も月間15万PV。『「親力」で決まる!』(宝島社)、『「叱らない」しつけ』(PHP研究所)などベストセラー多数。近著に『「自分でグングン伸びる子」が育つ親の習慣』(PHP研究所)などがある。人気マンガ『ドラゴン桜』の指南役としても知られる。長年の教師経験に基づく話が、全国の小学校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気となっている。