親が子どもを直接変えることはできない

──他者信頼感を持つようになるためには親への信頼感を高めることが大事だという意味では、親も努力しなければならないと思います。親もわが子の小学校入学を機に子どもと一緒に成長していかなければならないということでしょうか?

親野 全くその通りです。小学校入学というのは、親がひと段階、成長する機会だと思います。逆に言えば、親は子どものために変わりたいと思える時期でもあります。

 究極的な話をすれば、「教育とは何か?」ということなんです。教育というのは「教育者が変わること」だと私は思っています。教育者でも親でも、子どもを変えることはできません。なぜなら、人間同士だからです。

 教育者だけでなく親も、ついつい子どもを変えたいと思ってしまいます。でも、それはせんえつなことなんですよね。変えたいと思うのは、自分だけが正しいと思っているからです。しかし、絶対にそんなことはない。子どもには子どもの、これまでの生きてきた“文脈”があるのですから。

 親は子どもを見て「これじゃあダメじゃん」って思うけれど、その子は今、そういう状態でいる必要性があるんですよ。それを親はすべて分かってあげることはできないのです。だからこそ、子どもを自分の思い通りに変えようとするのは、やってはいけないことなんです。

 そうではなく、親である自分が変わるその影響が、自然にわが子に及んでいくようにするというのが、私は子育てにおいて目指すべき姿なのではないかと思っています。子どもを変えようとするのは、やってはいけないことなんです。

 親が子どもを直接変えることはできません。親が変わらなければ、子どもも変わらないんです。

画像はイメージです(写真:鈴木愛子)
画像はイメージです(写真:鈴木愛子)