マタハラNet代表・小酒部さやかさんの連載・第3回。今回、小酒部さんがお話を伺ったのは、グーグルでダイバシティ日本統括責任者を務める山地由里さんと、広報の緒方慈子(おがた・やすこ)さんです。

多様な人材がいる集団のほうが、効率よくクリエーティブに問題を解決できる

グーグル・ダイバシティ日本統括責任者・山地由里さん
グーグル・ダイバシティ日本統括責任者・山地由里さん

小酒部 今回は改めてダイバーシティーの価値について考えたいと思います。グーグルがダイバーシティーを推進する理由をお聞かせください。

山地由里さん(以下、山地) グーグルの根本には「10の事実」でも紹介しているように、「Do The Right Thing = 正しいことをする」という発想があります。また、テクノロジーで社会問題や困難な状況を解決したいという思いもあり、社内の取り組みを社会に広く公開して、少しでも課題解決に役立ちたいと考えているのです。また、極めてデータ重視の会社で、ダイバーシティーを語るうえでも、やはりリサーチや研究結果を非常に参考にしています

 例えば、「ダイバース=多様な人材」がいるグループと、「ホモジニアス=同じような人材」が集まるグループが問題解決に取り組んだとしましょう。前者のほうが違う意見が出てもめごとが生じるのでは、と予想する人が多いと思いますが、実際は、前者のほうが効率よくクリエーティブに問題を解決できる。それを証明する研究もあるのです。

 文化が違う人材と一緒に働き、今までとは違う視点が入ることで、瞬間的には対立が生まれ、スムーズにいかなくなる可能性はあります。しかし、最終的には多様性が担保されているほうが、より良い結果を導くことができるということが明らかになっています。グーグルでは、長期的な視点で多様性のある環境を目指していくことこそ、イノベーションには不可欠だと考えています。

多様性は性差だけではない

―― ダイバーシティーのメリットが様々な研究でも裏付けられているとのですね。マタハラNetとしても勇気付けられます。では、日本のダイバーシティーの現状について率直な意見をお聞かせいただけますか?

山地 ダイバーシティーというと日本では、「男性」対「女性」といった対立の構図から語られることが多いのが現状だと思います。しかし、それでは大きな弊害をもたらします。男女といった対立の構図から話をされてしまうと、女性社員がいない現場では「でも、うちには女性がいないからね」と、その時点で対話が終わってしまうからです。

 実際は、たとえ男性しかいない環境だとしても、その中に無数の多様性が存在しているのです。その多様性の中で、自分のバックグラウンドは、どうチームに影響を与え、貢献しているのかを考えることが必要なのです。