子どもが成長するにつれ、親子で楽しめる遊びはぐんと幅が広がっていくもの。22歳社会人と高校生の息子を持つ著者・小栗雅裕さんが、大人の扉を開き始めた息子達に「大人の世界はこんなに面白いぜ!」と伝えるこの連載。今回は息子二人を連れてプロレスへ。初めてのプロレス観戦を存分に楽しんだ息子達。でも一番楽しんだのは、ジャイアント馬場・アントニオ猪木の全盛期に青春時代を過ごした小栗さんのようです。

「男のくせに」「男の子でしょう?」と言わないで育てようと決めた

 男の子が生まれるって分かったとき、決めたことが一つある。「男のくせに」とか「男の子でしょう?」とか言わないで育てようと。ことさら男の子には強さを求めるこの種の言葉のプレッシャーがキツイ。世間の決めた「らしさ」なんてどうでもいいから好きなようにありのままに生きてほしいと思ったからだ

 それでも、ありのままに育っていると、男の子は突然、体を鍛えだしたりする。長男はトレーニングチューブを買ってきて、格闘家や古武術の本を読み出した。僕が高校時代の下宿でも、運動器具のエキスパンダーやブルワーカー(今も昔も雑誌広告で有名な)のない部屋はなかった。先輩達は、彼女を守るために強くなるんだと、言っていたが、一体彼女を何から守ろうとしていたのか。そもそも鍛えていた先輩達にも彼女なんていなかったのに。

 年ごろの男の子にとって、強さに憧れるのは自然なことなのかもしれないが、押し付けたくはなかった。長男のやることを眺めながら、体を鍛える暇があれば音楽聞いてドラムを叩いていたほうがいいよって冷めた見方をする次男のような男の子もいる。今回は、そんな対照的な二人と一緒に格闘技を見て「男の子の強さ」について語ろうじゃないかと思った。

左/後楽園ホールの一角、デザインが独特のプロレスポスターに見入る長男。右/入場前、緊張気味の次男。この後徐々に緊張が解けていきました
左/後楽園ホールの一角、デザインが独特のプロレスポスターに見入る長男。右/入場前、緊張気味の次男。この後徐々に緊張が解けていきました