子育てから仕事から夫婦関係から社会問題まで、働く母とはなんと多くの顔を持って生きていることだろう。最愛の息子を育てながら小説家として活躍する川上未映子さんが、素敵も嘆きもぜんぶ詰め込んだ日々を全16回にわたりDUAL読者にお届けします。第13回のテーマは、「仕事と家庭の両立」についてです。

 24時間育児して、24時間働きたい……出産したばかりのころ、いつも本当に思っていた。そしてその思いは、何年たっても消えてくれない。「育児と仕事の両立」は、なぜ、どうして、こんなに難しいのだろう……今日もフレシネを飲んで考えた。

 とうとう、この日がやってきた。この冬、息子3歳もついにインフルエンザ罹患。とはいえ、これまでだって通常の発熱はもちろん、アデノウイルス、手足口病、ノロウイルス……などなどひととおりやってはきたのけれど、どうも、油断していたみたい。というのも、この年末から年始にかけてやはりノロウイルスに罹患して、それはもう記憶がところどころ抜けてしまうくらいに大変なことになったばかりだったので、「さすがに、こんなつらいことは続かないのでは……」みたいな、何の根拠もない希望があったのだと思う。

 最近の発熱も、親がいちおう仕事を入れていない土日に集中していたこともあり、ひょっとするとそれも油断してしまう要素だったのかもしれない。でも、違った。そんなのは当然のことながら関係なかった。知人のご家庭は、お子さんふたりが、溶連菌 → インフルエンザ → 溶連菌、みたいなありさまで、病気はなんどでもいかようにもくりかえす。

夫婦でほぼすべての仕事をキャンセルしました

 結果、絶対に欠席できないイベントひとつをのぞき、ラジオや取材や対談といった、すべての仕事をキャンセル。でも家でだって書かなきゃならない連載原稿やゲラが山積している。夫も同業で似た状況。病児保育も先が見えないキャンセル待ち……近くに駆けつけて助けてくれる親戚が誰もいないので、いつもこれが本当にキツい。これまでどうしてきたんだろう……と遠い目をして考えると、そうだった。子どもがまだ本当に小さいうちは、そしてプール熱とかが流行りだす頃は、そういえば外での仕事を意識的に入れないようにしていたのだった。それが最近少し大きくなって、「いけるやろ」と、だんだん「通常運転」にシフトしてきたわけだけれど、インフルエンザで万事休す。