息子の語学準備、自身の転職活動をスタート

 「子どもをシンガポールの小学校に入れる」という目標が定まってからは、計画的かつ具体的に動いた。

 それまでも家庭内で時々英語で話しかけるなど「子どもを英語に慣れさせる習慣」は意識していたが、海外に行く前のステップとして、移住の1年前からインターナショナルプリスクールに息子を通わせることに。「日本人も結構いる学校だったので英語力はさほど伸びませんでしたが、外国人に話しかけられても物おじせずにニコニコ対応できるくらいの成長が見られました

 同時に穐吉さんが始めたのは自身の転職活動だ。「シンガポールで働ける」という条件でエージェントに相談。粘り強く希望を伝えていると、ちょうどシンガポール支社立ち上げを控えていたベンチャー企業「TWO」を紹介された。

 「睡眠関連ビジネスにおいて本気で世界一を目指す」と熱く語る社長と面談し、「やりがいを持ってチャレンジできる仕事」と確信。リクルートで培った約8年の経験も、海外での未経験分野でのキャリアチェンジを支える自信になっていた。

日本で仕事を続ける夫とは2週間に一度会う

 2015年1月に入社し、3カ月後には現地での会社設立を担う要員としてシンガポールへ。現地で実績のあるパートナーと連携し、日本のスタッフとはスカイプ会議でコミュニケーションを取りながら、孤軍奮闘する毎日を送っている。

 インバウンド向けITサービス事業で起業して間もない夫はすぐには日本を離れられなかったため、母子二人での海外移住を選択した。夫は週末を利用して2週間に1回のペースでシンガポールまで会いに来てくれる。

 「心細いときもありますが、距離が生まれたことでかえって家族の結束が強くなったような感覚もあります。ただ、息子はパパと遊べる日が待ち遠しくてたまらない様子。私も息子とのコミュニケーションを第一に考えています」

 この1年の間に、転職、シンガポールへの移住、海外支社設立準備、子どもの現地学校への入学と、ビッグイベントを立て続けに乗り越えてきた穐吉さん。次回の記事では、移住や入学の準備をスムーズに進めるためのポイントや実際にかかる生活コストなどを紹介する。

(文/宮本恵理子)